事務所の契約アンペアは変えられる?
賃貸物件で電気を契約するときの注意点
事務所の物件を契約する際、ついつい忘れがちなのが電気の契約アンペアです。
しかし、よく確認しておかないで開設・移設すると、容量が足りずに業務に支障がでてしまうことになりかねません。
まずは、自社で毎月どれくらいの電気を使っているか確認してみましょう。
電気の使用量を確認する方法
賃貸物件において事務所の開設・移設を準備している人にとって、電気の使用条件はとても重要な検討項目です。
検討にあたっては「電気の使用容量を計算しておくこと」がまず大切です。
その上で「最大アンペア数」「分電盤の回路の数とそれぞれのアンペア数」をチェックしましょう。
現在使っている事務所があるなら、契約アンペアが記述された検針票を確認することで電気の使用量がわかります。
事務所の規模が変わらないなら、そのアンペア数を満たしていれば問題ありません。
業務用電源の場合、「kW」と「力率」で記述されていることもあります。
たとえば「300kW」「力率100%」などです。
通常供給されているのは100Vですから、この場合「100V×30A×100%=300kW」であり30Aで契約していることがわかります。
事務所を新設したり、規模を拡大させたりする場合には、電気の使用量の目安を計算しておきましょう。
一例を紹介すると、デスクトップPC
は1~4A、ノートPCは0.5~1A、液晶モニターは0.2~0.6Aです。
また、インクジェットプリンターが0.1~0.3A、レーザプリンターが2~5A、複合機が15~20Aとなっています。
他にも蛍光灯0.3~0.4A、電子レンジの6~15A、電気ポット9~13Aといったものも計算しておきましょう。
これらを計算すると、5人ほどが働く一般的なオフィスでは大体30~40Aが必要です。
業務の内容によっては電気容量の多いサーバーを何台も設置したり自動販売機を設置したりするなどもあります。
事務所によって必要なアンペア数は違うので、できるだけ正確に算出しておきましょう。
移転先物件の内覧時に確認するポイント
電気容量の目安がわかったら、賃貸物件の最大アンペア数がその条件を満たすかチェックします。
もし条件を満たしていないなら、事務所の規模に合っていないのかもしれませんし、契約アンペア数を変更する必要があるかもしれません。
最大アンペア数はブレーカーを見ればわかります。
仲介会社や貸し主に確認するだけでなく、内覧時にブレーカーをチェックしておくといいでしょう。
一般的な事務所で使用されているブレーカーは、分電盤のなかにある単相3線式と呼ばれる配線ブレーカーです。
赤・白・黒の3線が接続された単相3線のブレーカーには「100AMP」などと記述があり、これが最大アンペア数を表しています。
なお、分電盤は危険なので、施錠されているのが通常です。
確認できない場合は仲介業者やオーナーに問い合わせましょう。
最大アンペア数を確認できたら、次のチェック項目は分電盤の回路の数とそれぞれのアンペア数です。
分電盤の中には大元の単相3線のブレーカーに比べて小さなブレーカーがいくつも並んでいます。
そして、そのそれぞれが「事務所蛍光灯」「フロアコンセント」「給湯室コンセント」などのように分割されています。
これらのブレーカーは通常20Aです。
具体的な使用状況を想定して、20A以内で分割できるかチェックしましょう。
たとえば、落ちてしまうと重大なトラブルになるサーバーや複合機を単独で使えば、他の機器の影響を受けないので安全です。
また、パソコンは1つの回路・ブレーカーにまとめておくと管理がしやすいといえます。
回路数が少ないと無理に多くの機器を接続するため、ブレーカーが落ちる原因になりかねません。
できれば予備の回路もあったほうが余裕があって安心です。
ブレーカーが落ちた場合も想定して、回路・ブレーカーを分割しておきましょう。
事務所の契約アンペアは変更できるが確認が必要
アンペア数が事務所の規模に合っていない場合は、アンペア数を上げたり下げたりできます。
ただし、建物に引き込まれている電気の容量には限界があります。
なぜなら、引き込みケーブルやブレーカーは電気の最大容量に合わせて設置されているので、アンペア数を上げると物理的な耐性を越えてしまうかもしれないからです。
築年数が古い中古物件は特に注意が必要といえるでしょう。
多くの電気機器が使用される状況が想定されていないことが多く、上げられる容量に制限があったりブレーカーの交換が必要になったりするケースが考えられるからです。
契約アンペアを上げるときは、必ずオーナーや管理会社に確認しましょう。
引き込みケーブルやブレーカーの交換によって大がかりな工事になることもあるからです。
後でトラブルにならないためにも、オーナーや管理会社に連絡しておきます。
契約アンペア数を下げる場合は問題にならないことが多いですが、上げる場合には要注意です。
また、建物の引込み電力が「低圧電力」か「高圧電力」かによって、契約変更の方法は異なります。
低圧電力で事務所が電力会社と直接契約をする場合には、オーナーや管理会社に一報を入れた後、契約する電力会社に希望のアンペア数にできるか問い合わせましょう。
低圧電力であっても建物全体が一括契約されている場合もあります。
この場合、オーナーや管理会社を通して契約変更をしてもらいます。
希望するアンペア数をオーナーや管理会社に伝え、可能かどうか問い合わせましょう。
高圧電力の場合は、建物一括で電力会社と契約しており、事務所で使用する低圧電力に変換しているのもオーナーや管理会社です。
この場合もオーナーや管理会社に連絡することになります。
低圧電力か高圧電力を見分けるには、建物を管理している会社に問い合わせてみるのが最も簡単です。
また、建物内にキュービクルと呼ばれる高圧電力を低圧電力に下げる施設がある場合、高圧電力とわかります。
契約アンペアを変更したときの注意点
アンペアの契約は1年単位でできます。
したがって、電気の使用量が増える冬や夏の特定の期間だけ契約アンペア数を上げるといったことはできません。
電気の使用量が最も多い時期(通常は冬)に合わせて契約しましょう。
アンペアの契約変更は基本的に無料ですが、室内に別途配線が必要な場合は費用がかかるので注意が必要です。
契約アンペア数を変更すると基本料金が変わります。
電力会社や地域によって料金は違いますが、以下を目安に検討しましょう。
20Aが約561円、30Aが約842円、40Aが約1123円です。
また、50Aは約1404円、60Aは約1684円となっています。
また、契約アンペア数を変更した場合、退去時に元に戻さなくてはなりません。
賃貸物件を退去する際には、入居中に変更を加えたことに対して「原状回復」という義務があるからです。
原状回復が問題となり、元のアンペア数に戻すための工事費を後から請求されたなどのケースもあるので、注意しておきましょう。
ただし、原状回復の義務は賃貸借契約時の設備に対してだけ生じます。
分電盤のなかのブレーカー類などは所有者が決まっており、サービスブレーカーや電気メーターは電力会社、安全ブレーカー・漏電遮断器は建物所有者です。
したがって、サービスブレーカーや電気メーターなどの電力会社の所有物に対しては、原状回復義務が発生しません。
通常、低圧電力で直接契約をしている際は、退去時に元のアンペア数に戻すように連絡するだけです。
事務所の契約アンペアは事前に確認すると安心
賃貸物件で事務所を開設する際には、電気の使用条件は最重要項目のひとつです。
電気が落ちてしまうと事務所の業務に支障がでてしまうこともあるので、電気の使用容量をあらかじめ計算しておき、契約アンペア数を確認しておきましょう。
分電盤のなかの、各ブレーカーの割り振りや低圧電力・高圧電力なのかなども併せてチェックしておくと安心です。