事務所移転はただの引っ越しと違う!
必要な手続きについて知っておこう
事務所を移転する際は、さまざまな手続きが必要なことを把握しているでしょうか。
事務所移転の際の手続きは、一般的な住居の引っ越しと比べて数が多く内容もより複雑な傾向です。
これらを知らないまま、移転準備をしたり移転した後の手続きを放置したりして業務に就くことは、多大な支障をきたしてしまうおそれがあります。
そこで、今回はスムーズに移転後の業務ができるように、移転前から準備できる手続きについて紹介していきます。
手続き1. 転居届
郵便局に「郵便物届出変更届」を提出する必要があります。
これは、郵便物がきちんと移転後の住所にも届くように設定してもらうための届です。
移転後に、最寄りの郵便局で手続きをします。
提出の際には、届出人と法人の関係性が証明できるような社員証や健康保険証が必要です。
また、郵便物届出変更届の「転居届提出者氏名」欄には、法人の代表者名を記入します。
手続き2. 本店・支店移転登記申請書
法務局には、「本店・支店移転登記申請書」を提出する必要があります。
本店の場合は移転後2週間以内で、支店の場合は3週間以内が提出期限です。
同じ管轄の法務局区内に本店を移転する場合と、別の管轄の法務局内に移転する場合で登録免許税の費用が異なります。
前者は3万円で、後者は6万円です。
変更に必要な書類は、登記簿謄本、定款、印鑑証明書、株主総会議事録または取締役会議事録となっています。
移転前の管轄法務局が申請の受付窓口です。
手続き3. 異動届出書
税務署には、法人税の取り扱いに関係するため、移転後速やかに「異動届出書」を提出しなければなりません。
この書類は、移転前と移転後双方の管轄税務署に提出する必要があります。
窓口に提出する際には、法人登記簿謄本、登記事項証明書、定款等の写しなどを持参しましょう。
また、郵送やe-taxでも申請可能です。
異動届出書は、移転以外にも会社名の変更や、代表者が変わったときなどにも提出する書類です。
変更があった際には確実に提出することを覚えておきましょう。
また、東京都の場合は税務署への届出と同時に、都税事務所にも住所変更の「異動届」を提出することが求められます。
移転前の管轄都税事務所に、移転後に届出をするようにしましょう。
手続き4. 自動車保管場所証明申請書
移転に伴い、会社で登録している車両も別の駐車場や会社の敷地内に移動することも多いでしょう。
その際には、「自動車保管場所証明申請書」を管轄の警察署へ提出する必要があります。
期限は定められてはいませんが、車庫証明がなければ車両の保有は原則できませんので、できるだけ早く出すようにしましょう。
さらに、移転でナンバープレートも変更になる場合は、「安全運転管理者変更届」も出さなければなりません。
提出パターンには2種類あります。
1つ目が、管轄は外れるが都道府県内の移転である場合です。
このときは、移転先の管轄警察署に変更届と、安全運転管理者等は変更ない場合のみ証明写真を合わせて提出します。
2つ目は、他の都道府県に移転する場合です。
この場合は、いったん解任届を移転前の管轄警察署に提出し、変更届とは別に選任届を移転先の公安委員会へ提出することになります。
手続き5. 適用事業所所在地・名称変更届
主に、従業員の健康保険料や年金を取り扱う年金事務所へは、「適用事業所所在地・名称変更届」を移転後5日以内に提出しなければなりません。
これは、健康保険料や年金の扱いを正常に保つための重要な手続きとなっています。
届を持参する場合は、同時に移転先の住所が判別できる法人登記簿謄本、建物の賃貸借契約書の写し等を持っていきましょう。
郵送や電子申請も可能となっています。
書類には、「管轄内用」と「管轄外用」の2種類があるので、提出前にどちらを提出すればいいのか確認することが望ましいです。
手続き6. 労働保険所在地等変更届
事業者の氏名や住所に変更があった際には、労働基準監督署ならびに公共職業安定所(ハローワーク)に「労働保険所在地等変更届」を提出する必要が出てきます。
期限は、移転後10日以内で、届出先は移転後の管轄している労働基準監督署と公共職業安定所です。
持参、郵送、電子申請での届出を受け付けています。
内容確認に、移転後の登記簿謄本写しまたは賃貸借契約書写しを求められることがありますので、事前に準備しておくことが望ましいです。
また、法人の場合は提出不要です。
手続き7. 雇用保険事業主事業所各種変更届
事業主の名前や住所が変更になった際には、公共職業安定所に「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出しなければなりません。
この書類は、雇用保険に関係するものです。移転から10日以内に、移転後の公共職業安定所に提出しましょう。
移転後の登記簿謄本写し、労働保険名称、所在地変更届が必要です。
持参の他には、電子申請も可能ですが、郵送では受け付けていません。
こちらについても、法人の場合は提出不要です。
提出を忘れないように注意しよう
事務所移転に伴う公的な手続きは、実に多種多様です。
公的な手続き以外にも、やらなくてはならないものがいくつかあります。
まずは、銀行口座の住所変更です。
会社の資金関連に直接関係のある項目なので、移転後すぐに行うようにしましょう。
法人契約のクレジットカードがある場合は、クレジットカード会社に連絡をして、住所変更の手続きを取る必要があります。
こちらについても、変更完了まで時間がかかることがあるので、速やかに行うことが望ましいでしょう。
社会保険以外の保険に入っている場合も、手続きが必要です。
保険証券や被保険者の把握など、手続き前に確認や準備がいるものが多いので、漏れのないように留意して保険会社に連絡しましょう。
さらには、インターネットや電話回線の手続きも業務に直接関係することなので、急ぐ必要があります。
このように、公的か否かを問わず挙げていくと、枚挙に暇がないほどの量となります。
複雑かつ量の多い手続きを円滑にこなすためにも、移転前から余裕をもって「何をすべきなのかをリストアップしておくこと」が肝要となってきます。
その際は、「移転前、移転後どちらに手続きをするのか」「公的なのかそうでないのか」を区分し、同時に必要書類の準備や関係各所への連絡などを適宜行うとよいでしょう。
特に、移転後は片づけや業務準備などの目先の作業に追われ、つい忘れてしまうこともありえます。
リストアップして目視できるようにしておけば、そのリスクも減らせることが期待できます。