オフィスの解約方法とは?
解約通知書や賃貸の途中解約の注意点を解説
オフィスを解約する際、どのように手順を進めればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。オフィスを解約・引っ越しする場合に必要な手続きにはさまざまなものがあります。
また、解約する際にするべきことを理解していないと、トラブルに発展したり、無駄なコストがかかったりする可能性があるため注意が必要です。
本記事では、オフィスを解約する際に注意すべきポイントや解約・引っ越しの際に必要な手続きなどを詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
オフィスの解約手順
オフィスを解約する手順は、以下のとおりです。
- 解約予告の期間を把握する
- 解約通知書の手配
- オフィスの解約・移転のスケジュールの確認
- 原状回復工事の依頼
賃貸オフィスを解約するには流れの把握や必要な手続きを行う必要があります。賃貸オフィスの場合、一般住宅とは手続きが異なる場合があるため注意が必要です。
1. 解約予告の期間を把握する
賃貸オフィスを解約する場合、オフィスが入居している貸主に対し解約予告をしなければいけません。解約予告期間は一般的に6ヶ月程度です。
解約予告期間に間に合わなかった場合、余分に賃料が発生してしまうため、必ず契約書にて確認しておきましょう。
また、解約予告をすると次の入居者が決まっていなければ交渉できる可能性もあります。ただし、基本的には取り消すことは難しくなるため、慎重に行いましょう。なぜなら、民法540条2項にもとづき、解約予告の撤回は原則不可能となっているからです。
2. 解約通知書の手配
賃貸オフィスを解約する際は、解約通知書の手配をしましょう。貸主もしくは管理会社から「解約通知書」を取り寄せ、指定されたとおり記入します。
書式の指定がない場合は、インターネットなどで手に入る解約通知書の書式で問題ありません。記入後は、指定された送り先に届けますが、書面の送付には、配送状況を追跡できる手段を使うのがおすすめです。
3. オフィスの解約・移転のスケジュールの確認
オフィスの解約には時間がかかるため、解約・移転のスケジュールを確認しておきましょう。
オフィスの解約・移転のスケジュールの準備期間は、移転する規模によって異なりますが30坪程度の場合は8ヶ月程前から準備を進める必要があります。また50坪や100坪のような大規模な移転の場合は、準備期間に1年〜2年かかる場合もあります。
まずは、移転する目的とスケジュールを明確にしておくことが大切です。移転先で新しいプロジェクトを進める予定があるなど、リミットがある場合はとくに重要です。
4. 原状回復工事の依頼
オフィスを解約する際、原状回復工事をしなければいけません。入居時と同じ状態に戻すため、工事の依頼とコスト、どれくらいの期間が必要なのかを確認します。
原状回復は、オフィス移転の4~5ヶ月前に行うのがおすすめです。
ただし、原状回復は、工事範囲や工事費用の認識ずれなどトラブルに発展しやすいため、契約書を再確認し、貸主と借主の認識を合わせておく必要があります。
オフィスを解約する際に必要な費用
オフィスを解約する際にはさまざまな費用がかかります。退去するオフィスだけの費用ではなく、引っ越しをする際は引っ越し先への費用もかかるため、事前に確認しておきましょう。
オフィスを解約する際に必要な費用は以下のとおりです。
- 原状回復工事費
- 廃棄物処理費
- その他の費用
- 敷金(移転する場合)
- 新オフィスへの引っ越し費用
それぞれ詳しく解説します。
1. 原状回復工事費
基本的に原状回復工事は、入居者負担で、貸主発注で行われます。その費用を貸主の請求に応じて支払うか、 敷金から差し引くかという手続きが取られます。
現在のオフィスにかかる原状回復費用としては、以下のように計算されることが多いです。
- 小・中規模オフィスの場合:一坪あたり2~5万円程度
- 大規模なオフィスの場合:一坪あたり5~20万円程度
原状回復工事は、まれに相場より高めの金額を請求されることもあります。工事費用が妥当かどうかを判断するために、複数の業者に見積もりを取ってみるのもよいでしょう。
2. 廃棄物処理費
オフィスをたたむ場合や引っ越し先で古い家具やOA機器などが必要ない場合は解約のタイミングで処分しましょう。廃棄物の処理費の目安は、2トントラックが約7~8万円、4トントラックで約10~15万円ほどです。
3. その他の費用
原状回復費や廃棄物処理費のほかに必要な費用もあります。例えば、官公庁などへ届け出する書類は、会社の規模に関係なく10~20万円ほど必要です。
ただし、専門家に頼らず自社で書類の作成や提出をすれば、費用は節約できます。また、オフィスを引っ越しする場合、住所や電話番号も変わるため、名刺や社用封筒などを新しくする費用もかかります。
4. 敷金(移転する場合)
オフィスを移転するなら新しいオフィスの敷金も必要です。また、保証金の預け入れが必要な場合もあります。敷金や保証金の目安は、家賃の6ヶ月~12ヶ月が目安です。
また、場合によっては以下のような費用も必要となることもあります。
- 仲介手数料(不動産会社への手数料):賃料の1ヶ月分
- 保証契約料(保証会社への手数料):賃料の1ヶ月分
5. 新オフィスへの引っ越し費用
解約した後、新オフィスへの引っ越しも伴う場合、オフィス家具や事務用品、パソコンなど運ぶ費用も必要です。引っ越し費用は、新しいオフィスへの距離だけでなく、荷物の量や大きさによって異なります。
費用の目安は、社員一人あたり2~5万円程度と言われています。引っ越し費用は業者によって異なるため、複数の業者に相見積もりしてもらい、適切な判断をしましょう。
途中解約の場合の注意点
オフィスを途中解約する場合は、契約内容により解約金がかかる場合があります。途中契約の場合の注意点は以下のとおりです。
- まず解約条項を確認する
- タイミングが悪ければ違約金がかかる
それぞれ詳しく解説します。
1. まず解約条項を確認する
解約条項は決まった文言はありませんが、賃貸借契約に借主からの期間内解約を認める条項があるかどうかを確認しましょう。期間が決められた賃貸借契約では「契約期間」も約束してあることから、借主から一方的に契約を解除することは原則として認められません。
ただし、賃貸借契約の中に解約条項がある場合には、例外で借主から解約できることになっています。期間内解約を認める条項は以下のように記載されています。
例)
第10条 乙は、甲に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、乙は、解約申入れの日から30日分の賃料(本契約の解約後の賃料相当額を含む。)を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる。
引用:国土交通省賃貸住宅の入居・退去に係る留意点(乙からの解約)
解約条項があれば借主の都合により契約期間中に解約が可能になるのです。
2. タイミングが悪ければ違約金がかかる
賃貸には、更新期間が設定されている場合が一般的です。更新期間中に解約できれば問題ありませんが、タイミングによっては違約金がかかることがあります。
また、更新までに数ヶ月~数年残っていると差額の残金を払わなければいけないこともあります。違約金に関しては、賃貸契約書に詳しく書かれているため確認しておきましょう。
オフィスを解約したあとの注意点
オフィスを解約したあとに、移転先などでスムーズに業務が行えるよう手続きなどは漏れがないよう確認しておきましょう。オフィスを解約したあとの注意点は以下のとおりです。
- 解約後の郵送物の転送
- 取引先などへの移転連絡
- 法的機関での手続き
それぞれ詳しく解説します。
1. 解約後の郵送物の転送
解約後の郵送物の転送は早めに行いましょう。転送手続きがうまくできていないと、旧オフィスに書類が届いてしまいます。
移転先が遠方の場合、転送まで時間がかかります。郵便物届出変更届は反映までに3~7日程度かかりますので、移転先や移転日が決まり次第、早めに対応しておくことが望ましいです。
2. 取引先などへの移転連絡
オフィスを移転すると住所や電話番号が変更になるため、取引先などの関係各所へ移転連絡が必要です。移転の1ヶ月前には新しい住所や電話番号、営業開始日を連絡しておくのが理想的です。
移転連絡の手段は、メールでも問題ありませんが、取引先によっては寂しい印象を持たれることもあります。とくに、重要な取引先などにはメールでの連絡にプラスして、手紙でも通知しておくのがおすすめです。
3. 法的機関での手続き
オフィスを移転する際は、法的機関での手続きも必要です。オフィスの賃貸契約以外で、法的機関での手続きは以下を参考にしてください。
【移転前に必要な手続き】
- 郵便物届出変更届(移転先や移転日が決まり次第)
- 防火対象物使用開始届(使用開始する7日前まで)
- 防火対象物工事等計画届出書(内装工事の着工7日前まで)
- 防火・防災管理者選任(解任)届出(移転の7日前まで)
- 消防計画作成(変更)届出(移転の7日前まで)
【移転後に必要な手続き】
- 異動届出書(移転後できるだけ早く)
- 自動車保管場所証明申請書(移転後できるだけ早く)
- 適用事業所所在地・名称変更届(移転から5日以内)
- 労働保険所在地等変更届(移転から10日以内)
- 雇用保険事業主事業所各種変更届(移転から10日以内)
- 本店・支店移転登記申請書(本店:移転から2週間以内、支店:移転から3週間以内)
社用車でナンバープレートも変更する場合は、自動車保管場所証明申請書と一緒に安全運転管理者変更届の提出も必要です。期限が定められているものに関してはできるだけ早く手続きを行いましょう。
オフィスを解約する際は事前準備をしてスムーズに行うことが大切
オフィスを解約・移転するためにはさまざまな手続きが必要です。そのため漏れが無いよう、事前準備を念入りに行い、スムーズに進めることが大切です。
解約予告期間や現オフィスの原状回復に関することについては、貸主と借主で認識が異なる場合もあり、トラブルに発展しやすい事象の一つです。賃貸契約書を見返したり、貸主や仲介業者に確認を取ったりするなど、お互いの認識を合わせておく必要があります。
本記事を参考にして、オフィス解約や移転に関する事前準備を行い、スムーズな手続きができるようにしましょう。