オフィスレイアウトの基準寸法とは?
適切な通路幅や注意すべき点を解説
職場の生産性と快適性に大きな影響を及ぼすのがオフィス環境です。そのなかでも、重要な役割を果たすのがオフィスの配置デザインです。
効果的なオフィス配置を構築するためには、基準となる寸法を把握することが不可欠です。この記事では、オフィスの配置デザインに関する基本寸法を詳しく解説します。
人々の広さや通路の幅などの基準から、理想的な通路のサイズまでを探求します。さらに、法律で規定されたオフィスの多様な寸法にも触れ、オフィス配置を変更する際に留意すべき要点を説明します。是非、この記事を参考にしながら、効率的で快適な職場環境を実現してみてください。
オフィスデスクの規格
一般的な事務机の標準的な寸法は、高さ700mm、奥行き600~700mmほどです。幅は通常1000mmから1600mmまでで、通常は100mm単位で調整されます。
これらの寸法は1971年に策定された「新JIS規格」という基準に基づいて生産されており、高さ700mmは当時の日本人成人男性の平均身長162cmを基準にして決まりました。この規格により、一般的なオフィスデスクは、日本人の標準的な身長に適合するようにデザインされました。
しかし、現在の日本人男性の平均身長は約172cmほどであり、新JIS規格の高さ700mmはやや低い可能性があります。そのため、近年では身長を考慮して、より適切な高さのオフィスデスクが求められるようになっています。
日本人の平均身長の変化に伴い、オフィスデスクの適切な高さに関する推奨事項は時代とともに変遷しています。
基準となる人の幅と通路幅の考え方
まずは、基準となる人の幅と通路幅の考え方について知る必要があります。
- 標準的な人の幅
- 標準的な通路幅の考え方
通路幅を設定する際には主観的な感じ方だけでなく、一般的な目安や法律・規制を考慮する必要があります。
標準的な人の幅
一般的に、日本人の体の幅は男性でおおよそ50cm、女性でおおよそ46cmとされています。この基準を考慮しながら、通路の幅を決定する必要があります。
また、人々が通り抜けるために最低限必要な幅は600mmです。この幅を下回ると、人々がすれ違うのが難しくなります。より快適な移動や作業を実現するためには、それ以上の広さの通路を確保することが望ましいです。
標準的な通路幅の考え方
オフィス内の通路幅は、人々が快適にすれ違ったり物を運んだりするために必要な最小限のスペースを確保することが要求されます。一般的な指針として、少なくとも1200mmの通路幅が推奨されています。
この1200mmの通路幅は、円滑な人のすれ違いや物の移動が可能な適切な広さです。この基準を考慮して、オフィスの内部レイアウトを計画する際には、歩行や移動がスムーズに行えるようなデザインを工夫することが大切です。
通路の両側に部屋やデスクが配置される場合や、よりゆとりのある通路スペースを求める場合には、通路幅を1600mmに広げることが適しています。特に緊急時や災害時には、避難経路として十分な機能を果たすために、広い通路幅を確保することが重要です。
オフィスの理想的な通路の寸法とは?
理想的な通路の寸法について以下のパターン別に解説していきます。
- メインの通路
- 隣り合ったデスクとデスクの間の通路
- 背中合わせのデスクとデスクの間の通路
- デスクと壁の間の通路
- デスクと棚の間の通路
- デスクと複合機の間の通路
- デスクとパーティションの間の通路
通路幅によってオフィス環境や作業効率は大きく変わります。
メインの通路
主要な通路の最小幅は120cm(1人がすれ違うための幅)と規定されています。これは通行スペースの最低限の確保を目指す基準です。
しかしながら、快適なすれ違いを考慮すると、140〜160cm程度の幅が好ましいとされています。この範囲を採用することで、人々が円滑に移動できる環境が整います。
また、災害時の避難経路としても広めの通路幅を確保することが望ましいです。緊急時には多くの人々が同時に移動する必要があり、その際には速やかで安全な通行が求められます。
充分な通路幅が確保されていれば、混乱や障害物による移動の遅れを最小限に抑えることができます。
隣り合ったデスクとデスクの間の通路
最小限の通路幅は60cmです。この幅を確保することで、人は通り抜けることができますが、すれ違う際にやや窮屈な感じがするかもしれません。より快適なすれ違いを考慮する場合、通路幅は90cm程度が好ましいとされています。
また、デスクの間が主要な通路になる場合、通路幅は120~160cmほどが必要です。主要な通路では複数人が行き来することが想定されるため、広めのスペースを確保することでスムーズな移動が可能となります。
背中合わせのデスクとデスクの間の通路
背中合わせのレイアウトでは、最低でも130〜150cmの通路幅が不可欠です。この広さを確保することで、効率的で快適な作業環境を確保できます。
通路幅が狭すぎると、従業員同士が衝突したり、移動時に不便を感じる可能性があります。逆に、広々とした180cmの通路幅を確保することで、より開放感があり、作業の効率も向上するでしょう。
デスクと壁の間の通路
デスクと壁の間の通路幅に関して、最適な状態では150cmの確保が望ましいです。この寸法を保つことで、適切なスペースが提供され、作業や移動中にも快適に通行できるでしょう。
同時に、デスクに座った状態で必要とされるスペースも念頭に置く必要があります。通常、デスクに座っているときに前や横に身体を動かすことがありますので、デスクと壁の間の通路幅は少なくとも45cm以上を確保することが望ましいです。
デスクと壁の間が通路として使用される場合、150cmの通路幅を確保することが重要です。このエリアは頻繁には利用されないかもしれませんが、緊急時や設備点検の際にアクセスが必要となるかもしれません。したがって、広い通路を確保しておくことが肝要です。
ただし、デスクの背面が通路に面していない場合は、デスクと壁の間を45cm以上開けることが求められます。この配置を選択することで、通路幅を拡大し、作業の効率と安全性を高めることができます。
デスクと棚の間の通路
デスクの背面がキャビネットとなっている場合、通行幅と作業スペースの両方を考慮する必要があります。
最初に通行幅について述べますと、デスクとキャビネットの間で通り抜けるためには、十分なスペースが必要です。最適な通路幅は160〜180cm程度確保することが望ましいです。このような広さを確保することで、多くの人々が円滑に移動できるだけでなく、車椅子を使用する人も安心して通行できるでしょう。
次に作業スペースに関して考えます。デスクの後ろがキャビネットになっている場合、作業スペースを確保するためにはキャビネットの開閉スペースも考慮する必要があります。作業の頻度や保管物の量に合わせて、作業スペースの広さを検討することが大切です。
デスクと複合機の間の通路
デスクとコピー機が向き合う配置の場合、これらの機器を利用しながら通路を確保するには、最低でも120cmの幅が必要です。
この幅を確保することで、デスクに座ったままでもコピー機を操作することが可能となります。デスクとコピー機の配置を少し離して配置することで、作業の効率や利便性を向上させることができます。また、広めの通路幅を確保することは、安全性と快適性の観点からも重要です。
デスクとパーティションの間の通路
デスクとパーティションの間の通路幅に関して、最小限必要な寸法は60cmです。これは、一人が通過する際に確保すべき最低限の幅とされています。
ただし、より快適性を考慮する際には、80cm程度の幅を確保することが望ましいとされています。このような広めの通路幅を確保することで、パーティション内での立ったり座ったりするスペースも十分に確保できます。
法律で定められているオフィスのさまざまな寸法
法律で定められているオフィスのさまざまな寸法について解説していきます。
- 廊下
- 避難経路
- 労働環境基準
オフィス内の廊下や通路の幅は法律によって定められており、遵守することは労働環境の安全性と快適性を確保するために重要です。各寸法の規定について詳しく解説していきましょう。
廊下
まず、建築基準法による廊下の幅に関する規定について説明いたします。廊下はオフィス内で重要な通路として役割を果たすため、適切な幅が確保されることが必要です。
片側に部屋がある場合、建築基準法では最低でも120cmの幅が求められます。この規定は、火災や地震などの緊急時に、多くの人が安全に避難できるスペースを確保するためのものです。
一方で、両側に部屋がある場合、より広い通路幅が要求されます。建築基準法では、最低でも160cm以上の幅が求められます。これは、両側から人々が通行する際に円滑で安全な通路を確保するための規定です。
また、オフィスの廊下では、できるだけ物を置かず、避難しやすい状態を維持することも重要です。緊急時には素早く避難する必要があるため、廊下に不必要な物や障害物を置かず、スムーズな避難経路を保つよう心がけましょう。
避難経路
オフィス内での防災対策は非常に重要であり、避難経路の確保はその中でも特に注目すべき要素です。建築基準法や消防法によって、避難経路の幅や距離に関する規定が設けられています。
まず、窓のある部屋においては、15階以上では避難経路が50メートル以内に、14階以下では60メートル以内に確保される必要があります。窓のある部屋の場合、避難経路を最短距離で確保することが求められます。
また、窓のない部屋においては、15階以上では避難経路が30メートル以内に、14階以下では40メートル以内に確保される必要があります。窓のない部屋でも同様に、避難経路を最短距離で移動できるように配慮する必要があります。
ただし、避難階段までの距離は部屋の奥から測定されます。したがって、オフィスの配置設計においては、避難階段への距離を考慮したレイアウト計画が不可欠です。
労働環境基準
オフィスの寸法については、労働者の健康と安全を保障するために法律によって規定されています。
まず、オフィス内で1人当たりのスペースを確保する際に、気積(きせき)という尺度が用いられます。気積は、オフィスの床面積に高さを掛け合わせて得られる数値で、空間の広さを示す指標です。
労働基準法によれば、オフィス内では1人あたり最低10㎥の気積が必要とされています。これは、各社員に充分な作業・業務スペースを提供する重要性を反映しています。
実際には、この10㎥は最低ラインであり、より広いスペースを確保することで、社員の快適性と働きやすさを向上させることができます。例えば、デスクや椅子の配置においても、適切なスペースを配慮することが重要です。
これらの労働環境基準を遵守することは、社員の生産性向上や業務効率の向上につながるでしょう。適切なスペースが確保されることで、業務に集中しやすくなり、ストレスや疲労の軽減にも寄与する可能性があります。
オフィスレイアウトを変更する際に注意すべきこと
オフィスレイアウトを変更する際には以下の点に注意しましょう。
- 消防設備の設置場所に注意する
- 家具やパーティションが倒れないようにする
これらの点に注意することで、より安全かつ快適なオフィス環境を実現することができます。
消防設備の設置場所に注意する
消防法では、消火設備の適切な配置に関して明確な規定を設けています。オフィスのレイアウト変更時には、消防設備の配置に特に留意が必要です。適切な配置が行われていないと、火災発生時の消火や避難が難しくなる可能性があります。
まず、消火設備の設置場所について述べますと、オフィス内には消火器やスプリンクラーなどの複数の消火設備を配置することが求められます。これらの設備は、火災発生時に迅速に鎮火するために重要です。具体的には、消火器やスプリンクラーは、容易にアクセスできる場所に設置されるべきです。
さらに、避難経路や重要施設周辺にも消火設備が配置されることが必要です。設置場所や必要数に関しては、消防法や建築基準法によって規定されており、これらの基準に従う必要があります。
消防設備の設置は、専門知識が必要な場合もあるため、専門家に相談することが賢明です。
家具やパーティションが倒れないようにする
地震対策として、オフィス内に配置されている背の高い収納庫や書棚などの家具は、地震の揺れによって転倒しないように固定する必要があります。
そのためには、アンカーボルトや金具を使用して家具を壁や床に固定することが重要です。適切な方法と場所を選ぶことで、地震が発生しても安全な状態を保つことが可能です。
また、パーティションの種類によっては、連結可能な長さやレイアウトに制約があることもあります。
新しいレイアウトを検討する際には、使用するパーティションの特性や制限を確認することが大切です。適切な情報を把握することで、オフィスのレイアウト変更を効果的に実施することができます。
オフィスの適切な寸法を知り、快適なオフィス空間を守ろう
この記事では、オフィスレイアウトの基準寸法について解説しました。オフィスの適切な寸法を知ることで、社員の快適な作業環境を守ることができます。
レイアウト変更やオフィス移転を検討する際には、専門家のアドバイスや関連法規の確認を行いながら、最適なオフィス環境を実現しましょう。快適なオフィス空間は、社員の業務パフォーマンス向上や働きやすさにつながりますので、積極的に改善を図っていきましょう。