内科開業の成功ポイント
資金やクリニックの形態ごとのメリット・デメリットも解説
内科開業の成功にはいくつかのポイントがあります。この記事では、内科開業を考える医師の方々に向けて、開業の成功ポイントを解説します。
さらに、内科開業の形態ごとに考えられるメリットとデメリットや、内科開業に必要な資金相場、成功のための準備についても紹介します。本記事を参考にしながら、内科クリニック開業に向けた計画を立てていきましょう。
内科クリニックの現状
現在、日本の内科クリニックは増加傾向にあります。厚生労働省の統計によると、約6割以上のクリニックが内科を専門としています。内科クリニックの数は地域によってばらつきがありますが、都心部ほど激しい競争状況にあると言われています。
一方で、将来的には少子高齢化や人口減少の影響で患者数の減少が予測されています。これに加えて、外来医療への需要が減少する一方で高齢者の在宅・入院医療利用が増加する可能性もあります。これらの要因は内科クリニック経営に影響を与えることが考えられます。
したがって、内科クリニックを開業する際には外部環境の変化を十分に考慮し、入念な準備が必要です。市場調査や競合分析を通じて、所在地や周辺地域の需要動向を把握しましょう。また、医師やスタッフの採用や設備投資なども含めた経営計画の立案が重要です。
内科開業を考えたらまずすべきこと
開業を考えたらまずすべきこととして、以下の3点を紹介します。
- クリニックのコンセプトを決める
- 宣伝の準備
- コンセプトに適した物件探し
開業を考えたら、これら3つのポイントをしっかりと押さえて準備を進めてください。
クリニックのコンセプトを決める
自身のコンセプトを明確にすることで、クリニックの差別化を図ることができます。他のクリニックとの競争が激しい医療業界では、単なる医療サービス提供だけではなく、独自性や特徴を持つ必要があります。自身やクリニックの理念、価値観、アプローチ等を明確にし、それを活かした独自のコンセプトを確立することが重要です。
また、主要な治療対象や提供する医療サービスを特定することも重要です。自身の専門性や強みを活かして、特定の治療に力を入れることで差別化が可能となります。
さらに、ターゲット患者層を明確にし、差別化戦略を検討することも重要です。クリニックのコンセプトは、特定の患者層をターゲットにしたものとすることが有効です。
宣伝の準備
クリニック開業時には積極的な集客が必要とされます。そのために、オンライン集客方法を検討し、ホームページやネット広告、SNSなどを活用することが求められます。各メディアに治療に関する記事や診療情報を掲載し、専門性をアピールすることで患者からの信頼度を高めることができます。
また、診療時間や休診日などの情報を提供することで、患者の利便性向上とリピート率の向上を図ることができます。さらに、予約システムやネット上での問い合わせ機能も導入することで、患者からの連絡手段を多くすることが重要です。
コンセプトに適した物件探し
コンセプトに応じて適切な立地を検討する必要があります。都市部か郊外か、人通りの多い場所か落ち着いた場所かなど、開業するお店のコンセプトに合致する立地条件を考えることが重要です。
また、患者や来店者がアクセスしやすい立地であることも検討すべきです。交通機関の利便性や駐車場の状況など、来店者がストレスなくアクセスできる環境かどうかを考慮しなければなりません。
物件探しの際には、開業場所を決定した後、現地を訪れて周辺環境を実際に確認することも大切です。インターネットでの情報や写真だけでは物件の良し悪しや周囲の状況が正確に把握しづらい場合もあります。そのため、実際に足を運んで周囲の雰囲気や競合店舗の存在、交通アクセスなどを確認することが重要です。
内科開業形態別のメリット・デメリット
ここからは、開業形態別のメリット・デメリットについて解説していきます。
- ビル内クリニックのメリット・デメリット
- 戸建てクリニックのメリット・デメリット
- 承継したクリニックのメリット・デメリット
各開業形態の特徴を十分に考慮し、自身の開業プランに最適な形態を選択することが重要です。
ビル内クリニックのメリット
まず、初期投資額が比較的少なくなるため、開業資金に合わせたプランニングが可能です。ビル内に入居する形態では、建物や設備は既に整備されている場合が多いため、新しく建てる場合よりも費用を抑えられます。
さらに、好立地の物件を選択することができるため集患しやすい環境を作り出すことができます。ビル内にクリニックを開業する場合は、周辺人口の多いエリアや駅に近い場所を選ぶことが一般的です。これによって、アクセスの利便性が高まり、患者数を増やすことができます。
ビル内クリニックのデメリット
デメリットの一つ目は、設計プランの自由度が低く、制約が多い場合がある点です。ビルの構造や設備に合わせてクリニックを配置しなければならず、理想的なクリニックのレイアウトや内装を実現することが難しい場合があります。
二つ目のデメリットは、診療科目によってはクリニック向きでない場合や、家賃関連の問題が生じる可能性がある点です。また、ビルオーナーから求められる高額な家賃や共用施設の使用料も負担となる可能性があります。
さらに三つ目は、医療機器の搬入・設置、空調、換気、給排水設備などについて検討が必要な点です。ビル内の特定のフロアやエリアにクリニックを開設する場合、医療機器や設備の搬入経路や設置場所を考慮する必要があります。また、十分な空調や換気、給排水設備の整備も欠かせません。
戸建てクリニックのメリット
戸建てクリニックは、設計プランの自由度が高く、希望に合ったクリニックを実現できる点が大きなメリットです。一般的なテナントと比較して、広さや間取り、内装デザイン、院内動線などを自由に決めることができます。医師の希望に沿った充実した診療環境を作り上げることが可能です。
また、戸建てクリニックは駐車場の台数を確保しやすいため、車を利用して通院する患者の獲得が可能です。特に市街地では駐車スペースに制約があることが多く、テナントでは駐車場を完備することが難しい場合もあります。しかし、戸建てクリニックでは敷地内に駐車場を設けることができるため、車で来院する患者層を広範囲に見込むことができます。
戸建てクリニックのデメリット
戸建てクリニックを開業するためには、新たな医療施設を建設または改装する必要があります。そのため、建設や改装にかかるコストが非常に高額になります。例えば、医療機器の導入費や内装・外装工事費などがあります。これらの費用は数千万円から数億円以上にも上る場合があり、充分な資金確保が求められます。
さらに、開業までの期間も長くなることがある点もデメリットと言えます。土地選びから建築計画、工事の進行や検査など複数の工程を経て完成させる必要があります。そのため、開業までの準備期間が長期化し、時間と費用の損失が生じる可能性があります。
承継したクリニックのメリット
まず、内装や医療機器などの承継により、初期投資が新規開業より少なくて済む場合があります。新しいクリニックを建設する場合、建物の購入や内装設備の整備に多額の費用がかかりますが、既存のクリニックを引き継ぐ場合はこれらの費用を抑えることができます。
また、患者を引き継げるため、開業時から一定の患者基盤を確保することができます。前院長から引き継いだクリニックは、その地域で既に知名度があり信頼されているため、初めから一定数の患者を持っていることが予想されます。
さらに、スタッフの継続雇用も可能です。承継したクリニックでは、前院長が雇用していた経験豊富なスタッフをそのまま引き継ぐことができます。スタッフはクリニック運営で重要な存在であり、経験やノウハウを持っている人材を利用することはクリニック経営において大きなメリットです。
承継したクリニックのデメリット
まず、前院長の診療方針から大きく逸脱する場合、患者が離れてしまう可能性がある点です。患者は長い間信頼していた医師に連絡し、治療や相談をすることで安心感を得ています。しかし、新たな院長が就任し、診療方針や治療方法を一変させた場合、患者は混乱や不安を感じるかもしれません。その結果、他のクリニックへ移籍する患者も出てくる可能性があります。
次に、承継したクリニックでは既存の施設を利用するため、改修や医療機器の入れ替えなどに制約がある場合があります。また、新しい医療機器や設備の導入も望ましいですが、予算や既存の設備に対する制約も考慮しなければなりません。
内科開業に必要な資金の相場
開業に必要な以下の資金の相場について解説していきます。
- 一般的な内科で必要な資金
- 専門領域ごとに必要な資金
開業に必要な資金は専門領域や経営形態によって異なりますが、設備投資費用と運転資金の両方を考慮して計画を立てることが重要です。開業の成功に向けて、事前の十分な準備と経済的な計画が不可欠です。
一般的な内科で必要な資金
一般的な内科で必要な資金を以下の表にまとめました。
科目 | 資金相場 | 内容 |
---|---|---|
医療機器 | 約2,000〜6,000万円 |
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什器備品 | 約150~300万円 |
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消耗品や予備費 | 約200万円 |
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内装造作費 | 約1,500~3,000万円 |
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保証金 | 約180~500万円 | 6~12ヶ月分の賃料 |
前家賃 | 約60~100万円 | 2ヶ月分の賃料 |
礼金、仲介手数料 | 約100万円 | 1~3ヶ月分の賃料 |
運転資金 | 約3,500万円 |
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広告宣伝費 | 約300万円 |
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医師会入会金 | 年間約200万円 |
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専門領域ごとに必要な資金
続いて、専門領域ごとに必要な資金を以下の表にまとめました。
専門領域 | 資金相場 | 備考 |
---|---|---|
一般内科 | 5,000~8,500万円 | 一般内科のみを診療する場合と、それ以外の診療も行う場合では戦略が異なる。大都市部において、一般内科のみを提供する場合、競争が激しい地域も存在するため、考え方としては、都心だけでなく郊外も考慮に入れることが重要。 |
循環器内科 | 6,000~15,000万円 | 多くの場合、患者は診療内容が不透明であるため、詳細情報をウェブサイトなどに掲載しておくと、患者の受診意欲が高まりやすくなる。 |
消化器内科 | 7,000~10,000万円 | 下部内視鏡検査の導入によって、施設の面積、設備、および患者集患のアプローチに変化が生じる。施設の広さが変われば、当然ながら開業費用も増加するが、専門検査を実施するためのスペースが確保でき、それに伴い診療と患者集患の柔軟性が向上する。 |
呼吸器内科 | 7,000~8,500万円 | ポイントは、特に小児ぜんそくの患者を獲得できるかどうか。ファミリー層も含めて考慮。 |
糖尿病内科 | 5,000~8,500万円 | 一般内科と同程度の開業費用が、おおよその指針。ポイントは、管理栄養士と看護師の採用可能性であり、ホームページ上では集患だけでなく、スタッフの募集にも焦点を当てることがおすすめ。 |
内科開業の成功ポイント
内科開業の成功ポイントは以下の通りです。
- 立地のリサーチを徹底する
- 専門領域で差別化を図る
- WEBを活用したマーケティングを行う
- 悩むことがあれば早めに専門家に相談する
これらのポイントを押さえつつ計画的に開業準備を進めることでより良い結果が得られるでしょう。
立地のリサーチを徹底する
内科クリニックの立地は、差別化の最も重要な要因と言えます。患者は、家や学校の近くに信頼できる医院があることを好む傾向があります。そのため、患者の利便性やアクセスのしやすさを考慮して、適切な立地を選ぶ必要があります。
まず、人口が少ない地域では開業には適さない場合があります。患者数が限られている場所では、集患に苦労する可能性が高くなります。また、競合の多い場所でも開業は難しいかもしれません。そのため、リサーチを徹底して適切な立地を選ぶことが重要です。
専門領域で差別化を図る
日本では内科クリニックの数が増加しており、一方で人口減少が進んでいます。この状況下では、患者数の減少が懸念されます。そのため、内科開業においては差別化戦略が非常に重要です。
差別化の方法の一つとして、専門領域での特化が挙げられます。内科クリニックは診療科目が幅広く、さまざまな疾患や症状を扱います。しかし、これだけ多くのクリニックが存在する中で、一般的な内科ばかりでは集患につながりにくい可能性があります。
そのため、特定の専門領域に絞って診療内容や治療方法を提供することで差別化を図ることが重要です。例えば、循環器内科や消化器内科といった特定の臓器や組織に特化したクリニックを開業することで、患者からの需要を高めることができます。
WEBを活用したマーケティングを行う
近年では、内科の競争が激化しており、患者の獲得に苦戦する可能性が高まっています。そのため、内科クリニックがWebマーケティングに力を入れることは必須と言えます。
まず、家からの距離が近い内科の治療院は、競争が激化しています。このような場合、Webマーケティングを通じて隣の駅や離れた地域からも患者を引き寄せることが重要です。例えば、「〇〇駅 内科」や「〇〇市 内科」といったキーワードでの検索に対応できるようにすることで、より広範囲な患者層を獲得することができます。
また、地域密着型のクリニックでもWebマーケティングは有効です。地域住民への情報発信やコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことができます。ウェブサイトやSNSを活用してクリニック情報や健康情報を提供することで、患者のニーズに応えることができます。さらに、オンライン予約や診療時間などの情報も提供することで、患者獲得に貢献することができます。
悩むことがあれば早めに専門家に相談する
内科の開業は、成功するために悩んだり迷ったりすることが多いものです。しかし、そのような場合は早めに専門家に相談することをおすすめします。具体的には、コンサルタントや税理士、社会保険労務士といった各分野の専門家に相談しましょう。
まずコンサルタントは、幅広く深い知識を持つ専門家です。開業に関するさまざまな質問や疑問に対応可能であり、経営面や事務作業代行などもサポートしてくれます。
次に税理士です。税理士は税金の専門家であり、開業に際しては税務アドバイスを提供してくれます。また、資金繰りについても精通しているため、財務面でのサポートも期待できます。
また、社会保険労務士も重要な存在です。彼らは雇用関係や労働関係の専門家であり、法的なアドバイスも提供してくれます。スタッフの雇用保険や社会保険の手続き、給与計算など、診療以外の業務においても必要不可欠です。
内科クリニックの開業は計画の初期段階が大切
内科の開業について、まずすべきことや開業形態別のメリット・デメリット、必要な資金の相場、成功ポイントについてご紹介しました。
内科クリニックの開業は大きな挑戦ですが、初期の段階から適切な準備と計画を行うことで、成功への一歩を踏み出すことができるでしょう。