働きやすい環境を作ろう!
仕事がはかどる快適なオフィスとは?
従業員にとって「働きやすいオフィス」とはどんなものでしょうか。
環境が整ったオフィスでは作業効率も上がり、従業員もストレスがなくなるので生産性が高まります。
そのためにはレイアウトのほか、オフィス全体の明るさや温度調整にまで気をつかわなくてはいけません。
また、集中力を発揮できる条件がそろっているかどうかにも注意しましょう。
この記事では、働きやすいオフィスのメリットや、実現のために必要な条件を解説します。
1. 「働きやすい」とはストレスが少ないこと
業種や業態、個人差によって「働きやすさ」の基準は変わります。
たとえば、ある人にとっては広いオフィスのほうが解放感としては高く居心地良く感じるでしょう。
しかし、逆に余白の多いオフィスでは落ち着かないという人もいます。
そうしたタイプはむしろ、適度に狭いオフィスのほうが作業をしやすいと感じるのです。
ただし、すべての従業員にとって「ストレスのないオフィス」が理想的であるという前提は変わらないといえます。
オフィスの作業効率が落ちているとき、まずはストレスを与える要因がないかを探ってみましょう。
ストレスが続いていると、従業員は仕事に集中できません。
また、人間関係もぎくしゃくとしていきます。
その結果、コミュニケーションが滞ってしまい、情報共有に支障をきたします。
組織内の会話が減るので、最低限の報告や連絡が行われなくなっていく可能性すらありえるのです。
そして、ストレスには「精神的なもの」と「肉体的なもの」の2種類があります。
まず、騒音が頻繁に起こったり、オフィスのインテリアが派手で集中力を削がれたりするのは精神的なストレスといえるでしょう。
一方、作業に必要なだけのスペースが用意されず窮屈さを覚えるのは肉体的なストレスです。
働きやすいオフィスを作るにあたってはいずれのストレスも解消し、従業員がリラックスして作業にあたれるように意識しましょう。
2. デスクワークのしやすさは机と椅子で決まる
デスクワーク中心のオフィスでは、机と椅子の選び方で働きやすさは左右されます。
まずは、「高さ」を意識しましょう。机が低すぎても高すぎても作業は行いにくくなります。
デスクの上に置かれたパソコンの液晶と目の高さが並行になっている高さが理想的です。
しかし、座高は従業員によって変わるため、それぞれに合った高さの机や椅子を発注するのは大変な手間です。
そこで、机の高さは同じにして椅子は座高を自由に変えられるタイプにするといいでしょう。
次に、「机の機能性」を考えます。
デスクワークにおいては引き出しが必須です。
文房具や名刺入れをしまえる小さな引き出しと、ファイルを入れられる大きな引き出しが両方ともついている机を選びましょう。
また、デスク内には仕切りがついていると非常に便利です。
なぜなら、ファイルを用途や年代順に並べるうえで、仕切りがあると目印になるからです。
仕切りは別途注文することも可能ではあるものの、最初からそなわっている机にするのが無難でしょう。
そして、椅子の「座りやすさ」も注意します。
デスクワークの時間が長くなると、座りにくい椅子が大きなストレスとなるからです。
座面がちょうどいい面積で、適度にやわらかい椅子にすると体圧が分散されるので、座り心地が良くなります。
また、できればひじ掛けのある椅子を注文しましょう。
パソコン作業では腕をひじ掛けにもたれかけられるだけで、負担を軽減させられます。
3. 照明の明るさも働きやすさに影響する
オフィスでは、照明が暗いと重大な欠点になりかねません。
なぜなら、パソコンや資料など細かい文字情報を追わなくてはいけないデスクワークの障害となるからです。
また、製図などの細かい作業を正確に行うためにも、オフィスには十分な明るさが必要です。
ただし、明るければ明るいほどいいというわけでもなく、適度な明るさを保つようにしましょう。
たとえば、照明と机の配置によって適切な明るさは左右されます。
照明と机が近い位置にあると、明るい光をまぶしく感じてしまうでしょう。
また、JIS規格と労働安全衛生法でも明るさは細かく規定されています。
照明を買ったり並べたりする際には、規定に目を通しておくことが大切です。
まず、JIS規格ではオフィスの机上に750ルクス以上の明るさが必要だと定められています。
ちなみに、会議室では500ルクス以上、休憩室では100ルクス以上と部屋の用途によって照度の最小値は異なります。
原則として、緻密な作業を行う場所ほど明るさが確保されていなくてはなりません。
作業内容ごとに照度を規定しているのが労働安全衛生法です。
「粗な作業」を行う場合には、70ルクス以上の明るさがあれば法廷内です。
ただし、「普通の作業」となれば150ルクス以上が必要です。
そして、「精密な作業」を行う空間では300ルクス以上が求められます。
JIS規格も労働安全衛生法も、従業員をストレスや事故から守るために無視できないルールだといえるでしょう。
4. 温度や湿度を快適に保つことも重要
従業員の働きやすさを調整するうえで「温度と湿度」は大切なポイントです。
温度が高くても低くても人はつらく感じますし、作業にも集中できなくなります。
また、健康的に働くためには湿度も重要です。
乾燥しすぎたオフィスでは喉が痛くなったり、咳が出たりする傾向があります。
乾燥を防ぐために、多くのビルでは空調が配備されています。
しかし、空調をオフィスで調整できるビルばかりではありません。
管理室に頼まなければ調整できないビルもあるのです。
オフィスが快適になるよう吹き出し口の角度を調整できないようなら、従業員は不快感を覚えるでしょう。
また、窓の位置や日当たりなどもオフィス内の温度と関係しています。
夏や冬など温度が極端になる季節には過ごしにくくなるオフィスもあり、従業員の士気に影響が出るでしょう。
また、通気性の悪いオフィスも湿度が過剰に高くなりがちです。
オフィスの構造によっては、自社で除湿機や加湿器を設置して湿度調整を図らなければいけません。
ちなみに、労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則ではオフィス内の温度と湿度についての規定が記載されています。
それによると、室温が10度以下のオフィスでは、温度調整が必須です。
さらに、室温が17度以上で28度以下の状態を保たなくてはなりません。
そして、湿度は40%以上、70%以下の間を維持することがオフィス管理者の義務です。
そのほか、冷房をかけるなら室温を屋外よりも著しく低くしてはいけないなどの規定もあります。
5. 働きやすい環境を整えることが退職者対策になる
オフィスによってはストレスの原因がはっきりしていても、あえて放置している場合があります。
たとえば、「後ろの席と近すぎて視線を感じる」「喫煙スペースが完全に隔離されていないのでヤニ臭い」などは、従業員によってはかなりのストレスとなりえる問題です。
どうしてこれらのストレスが解決されないのかというと、会社が費用を出し惜しみしてしまうからです。
また、直接業務内容に関係があるストレスではないので、一部の人間に我慢させればいいと考えている会社もあります。
しかし、業務とは関係のないストレスで退職する人も珍しくありません。
もしも「自分のパソコンが誰かにのぞかれている」と感じながら仕事をし続けていると、周囲の人間を信用できなくなっていくでしょう。
また、タバコの臭いが常に漂っているオフィスで嫌煙家が集中して働くのは至難の業です。
何より、「会社から自分は大切にされていない」と思い始め、モチベーションを下げてしまいます。
退職者を減らすには、業務に関係あろうとなかろうと従業員のストレスには敏感になることです。
そして、一人ひとりの意見を真剣に受け止め、対処していきます。
すぐにオフィスを広くしたり、立派な喫煙室を作ったりすることは無理でも席替えを行うなどすればストレスを感じている当人の悩みは解消できます。
とにかく、会社から従業員に思いやりの姿勢を見せることが肝心なのです。
6. 集中できるスペースになっているか
オフィスの働きやすさを考えるときはスタッフの目線に立ってみましょう。
たとえば、多くのオフィスではコミュニケーションが大切です。
そのため、開放性を求めてチームごとに机を島型レイアウトに並べているオフィスは珍しくありません。
しかし、島型のレイアウトだと周囲の目線が気になってしまうので集中力を要する作業に向かないという一面も持っています。
場合によっては、あえて周囲を遮断して働けるようなレイアウトにすることも大切です。
集中力重視のレイアウトとしては「ブース型」が有名です。
ブース型では机の周りに仕切りを作ってしまい、周囲が視界に入らないようになっています。
他人から作業をのぞかれる心配もないので、自分の手元だけに神経を注ぐことができるでしょう。
また、リラックスしながら作業を進められるため、ストレスがたまりにくいレイアウトでもあります。
ただし、ブース型には必要最低限の会話さえしにくくなってしまうデメリットも出てきます。
チーム内での情報共有が求められるオフィスでは、「半ブース型」のレイアウトにしてみてもいいでしょう。
半ブース型では一方向のみ仕切りを外し、隣接している人物とコミュニケーションを行えるようにします。
仮に同じプロジェクトを進めている仲間同士であれば、お互いだけ会話ができてほかの視界は遮断できる仕組みです。
7. 集まって話し合えるスペースがあるか
集中力重視のオフィスを作ったとしても、従業員同士が集まれるスペースは必要です。
円滑に仕事を進めていくうえでは、上司に相談したりアイデアを募ったりできる空間が不可欠です。
会社側からスペースを提供すれば、自然と従業員も利用するようになり会話が生まれていくでしょう。
「執務スペースがあれば問題ない」という考えもあります。
しかし、執務スペースでは空間が広すぎて、気軽に立ち寄れなくなりがちです。
また、執務スペースが休憩室や来客室を兼ねているオフィスもあるので、より利用しやすいスペースを置くのが理想です。
スペース作りの方法としてはまず、オフィス内に長机を設置することです。
複数の従業員が囲むように座れる長机はミーティングにぴったりです。
会議室などと違って予約が必要なわけでもないため、誰でも気軽に利用できてコミュニケーションのきっかけになります。
また、カフェスペースを置くのもひとつの方法です。
原則としては休憩スペースになるものの、特にオフィスと隔離しないことで緊張感を持続でき仕事の延長としても利用可能です。
リラックスしながら本音で語り合いたいときなどに立ち寄るのが効果的です。
そのほか、あえて席を固定せずに、その日の作業内容に応じて従業員が座る場所を変えているオフィスもあります。
ふだんから流動的な空間だと、従業員同士が集まって話し合うハードルも低くなります。
8. リフレッシュできるスペースも必要
働きやすいオフィスでは、リフレッシュスペースも充実しています。
仕事関係の空間しかないオフィスだと従業員はストレスを発散させる場所がなく、精神的に疲弊していきます。
オフィスの中でも仕事を忘れ、気分転換を図れる場所は必要でしょう。
効果的なのは、休憩室を設ける方法です。
通常のオフィスとは完全に隔離した場所に、従業員が食事をしたり仮眠をとったりできる部屋を設けます。
一時的に仕事から離れることで脳はリセットされ、再び新鮮な気持ちで机に戻れます。
ただし、休憩室を作るだけでは必ずしも利用につながりません。
なぜなら、従業員が「本当に休んでいいのか」と遠慮して寄りつかなくなる可能性があるからです。
コーヒーメーカーや雑誌を置くなど、従業員の休憩をサポートしてくれるアイテムがあると利用しやすくなるでしょう。
また、トイレをきれいにすることも肝心です。
トイレは勤務中に必ず立ち寄る空間であり、わずかな時間ながら癒しと安らぎを求める人が少なくありません。
それなのに、トイレが汚いとモチベーションに悪影響を与えます。
さらに、トイレの数が少ないのも問題です。
トイレが遠くにあったり、なかなか空かなかったりするとストレスが募り、作業効率も落ちる可能性があります。
貸オフィスなどで働きやすい物件を探すなら、業務スペースだけでなくリフレッシュスペースまで配慮されているかをチェックしましょう。
9. 環境を整備して働きやすいオフィスにしよう
働きやすいオフィスを決定する基準は、経営者側の感覚ではなく「従業員の満足度」です。
従業員が利用しやすく、ストレスのない環境こそ会社にも利益をもたらすオフィスだといえるでしょう。
そして、業務には直接関係ない部分でも従業員の満足度は変動します。
作業効率や組織内のコミュニケーション以外にも、従業員の希望を総合的に叶えられるオフィス作りを目指しましょう。