いまさら聞けない?「賃貸保証」ってなんだろう。
賃貸事務所(賃貸物件)を借りる際、連帯保証人が必要になると思っていませんか。しかし近年連帯保証人を立てるケースが減り、代わりに賃貸保証サービス(家賃保証会社)の利用を必須条件とする物件が増加しています。賃貸保証会社の利用にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。いざというときに備えて、賃貸保証会社の仕組みについて知っておきましょう。
- 入居者さまにとっての賃貸保証
- 初期投資や
連帯保証人の悩みに - 不動産会社さまにとっての賃貸保証
- 滞納を減らし、諸手続きを減らす!
業務効率化にも - 家主さまにとっての賃貸保証
- 不安のない家賃収入に、
少ないリスクでの入居率アップ!
1. 賃貸保証の基礎知識
賃貸保証(家賃保証)とは、入居者さまの賃料を家主さまに保証することです。通常、賃料の滞納が発生した際は、連帯保証人が賃料を立て替えて支払いを行います。しかし何らかの理由から連帯保証人がたてられないケースなどに、個人ではなく間に企業が入り賃貸保証会社物件の家主さま及び不動産会社さまに家賃の立替え払いをするシステムです。従来のように親や親族などが保証人の要件を満たさない、あるいは周囲に保証人を頼めるような方がいない、頼みにくい場合などに利用されることが多いです。賃貸保証サービスの多くが、家賃の滞納保証だけでなく、原状回復工事費用や、明けわたし訴訟費用などの範囲まで保証が広がってきています。
また賃貸保証会社を利用するかどうかは、基本的に家主さまや不動産会社さまが決めます。近年の賃貸物件では、賃貸保証会社の利用を義務付けているケースが一般的にもなっています。
●賃貸保証サービスの仕組み
賃貸保証サービスを利用する賃貸借契約の場合、賃料に応じた保証料(保証委託料)を入居者さまが支払わなければなりません。保証料は、初年度で賃料の0.5~1カ月分が一般的で、2年目以降は年1〜数万円の保証料が発生するケースが多いです。ただし、保証料(保証委託料)や支払う頻度は、賃貸保証会社によって異なります。
2. 入居者さまにとっての賃貸保証
ここからは賃貸保証会社を利用する事によるメリット・デメリットをご紹介します。きちんとメリット・デメリットを知った上で、賃貸保証サービスの利用をご検討頂ければ幸いです。
●入居者にとって賃貸保証サービスを利用するメリットとは?
入居者の滞納を保証するのが賃貸保証の主な役割ですが、入居者にとってのメリットもあります。
①連帯保証人をたのまなくていい
②職業による審査落ちを防げるかもしれない
③敷金の減額交渉
④オーナーと直接やりとりをしなくてすむ
- 入居者メリット①
- 物件を借りる際には、連帯保証人もしくは保証会社が必要になることがあります。しかし、滞納時に賃料を肩代わりする義務が発生する連帯保証人の役割を、引き受けてくれる人を探すのは難しいもの。賃貸保証会社を利用するメリットは、保証料さえ支払えば、連帯保証人の代わりになってもらえることです。
※賃貸借契約によっては、連帯保証人と保証会社の両方が必要なケースもあります。
- 入居者メリット②
- 賃貸保証会社を利用することで、連帯保証人をなかなか立てられない方や、収入が安定していない・変動がある職業の方でも賃貸物件が借りやすくなります。
- 入居者メリット③
- 賃貸保証会社の加入で、敷金が減るケースがあります。賃貸保証会社が賃料滞納や原状回復費用なども保証するため、家主さまは余分な敷金を預かる必要がなくなるからです。
- 入居者メリット④
- 物件の家主さま及び不動産会社さまに、保証会社が家賃の立替え払いをします。 万一、家賃のお支払いができなかった場合でも、保証会社が家賃を立替えするため、家主さまとの関係が即時に破綻するということを避けることができるかもしれません。保証会社の審査が通っているという『信用力』 で入居が可能になることもあります。
●入居者にとって賃貸保証会社を利用するデメリットと注意点
賃貸保証会社を利用する際のデメリットは、入居者さまに保証料の支払いが生じ、金銭的負担がかかることです。賃貸物件を借りた時点で保証料を支払い、定期的に更新料も徴収されることになります。
注意したいのは、家賃の滞納です。「賃貸保証会社が代わりに払ってくれるのでは?」と安易に考えるのは禁物です。当然のことながら、賃貸保証会社から立替金の支払いを請求されます。場合によっては督促が頻繁に来たり、信用情報に傷が付いたり、訴訟トラブルになる可能性もありますので、家賃は滞納しないように気を付けましょう。
3. 不動産会社さまにとっての賃貸保証
●不動産管理会社が賃貸保証会社を利用するメリットとは?
貸主に対する滞納リスクを軽減するのが主な役割ではあるものの、不動産会社にとってのメリットも多大にあります。
①入居審査の精度を上げられる
②督促が不要、確実な賃料回収
③様々な方に入居枠を広げることができる
- 不動産管理会社メリット①
- 入居審査の一部を保証会社が行ってくれます。保証会社の審査は不動産管理会社よりも高い精度で、信用調査を実施していることが多いので、入居審査の1つの基準とすることができます。
- 不動産管理会社メリット②
- 家賃の延滞に伴う督促や収納の業務は保証会社が担当いたしますので、滞納に関するトラブルに煩わされることがありません。
収納代行をご利用いただけば、滞納報告が不要となり延滞発生時には保証が自動的に立替え払いを行います。
家賃保証で未納家賃の回収漏れが減り、確実な利益の確保が可能となります。
- 不動産管理会社メリット③
- 今後増加が予測される外国籍の方やオフィス以外の様々な用途の保証にも対応しているサービスがあるので、安心して貸し出しが可能です。
●賃貸保証会社を利用する不動産会社のデメリットと注意点
不動産会社さまにとって賃貸保証会社を利用する際のデメリットは、保証会社による家賃滞納時の対応の差によるリスクが挙げられます。近年さまざまな業界から新規参入も多い家賃保証会社は、業界知識などによって判断や対応に差が出ることが少なくありません。特に対応の差が顕著なのは家賃滞納時の対応です。その際、貸金業・クレジット業界から家賃保証業界に転換した一部の保証会社においては、法に触れるような行為が問題となりました。
例えば、社会的に話題になった「追い出し屋騒動」があります。
留守中に物件内の荷物を運び出して部屋のカギを換え、事実上の追い出し行為を行なったケースや、立て替えた家賃の督促を夜間・早朝に行ったり、戸口で大声で支払いを要求、不適切な文言のある貼り紙をするなどの悪質な嫌がらせ行為を行ったケースなどが挙げられます。
本来、賃貸経営において家賃の支払いが1、2カ月遅れた場合でも、すぐに賃貸借契約を解除・入居者を追い出すことはできません。家主さまによって必要なプロセスを踏んではじめて、退去してもらうことが可能になります。
現在は法規制により、「追い出し屋騒動」のような違法行為はほぼ無くなったといわれていますが、滞納者に対しグレーゾーンぎりぎりの方法で取り立てを行う家賃保証会社が、ゼロになったわけではありません。業務は健全になされているか、信頼をおける会社かどうかについては、よく調査して確認する必要があるでしょう。
4. 家主さまにとっての賃貸保証
●貸主にとって賃貸保証サービスを利用するメリットとは?
多くの物件で保証が必須となっていっており入居希望者にとっても、支払わなければならないものとの認識がされており保証が入居希望者のデメリットでなくなっている現状、貸主にとってはほぼメリットしかありません。貸主が気をつけなければならないのは安心できる保証会社を選ぶということです。
- 貸主メリット①
- いつも「家賃の振り込みが遅れる」と悩む必要はありません。
入居者さまが家賃を滞納しても、保証会社が立替え払いをいたします。
- 貸主メリット②
- 保証人がいなくて断られた方でも、審査に問題がなければ保証会社が保証人になりご入居いただけるようになるため、空室率がグッと下がります。
- 貸主メリット③
- また、日本在住で家賃支払いの能力のある方であれば、国籍問わずご利用いただけるサービスもありますので、これからますます増加が期待される外国籍の方も入居が可能となり、さらに空室率が下がりやすくなります。
●賃貸保証会社を利用する貸主のデメリットと注意点
家賃を保証してくれるはずの保証会社自身が、倒産や破産をしてしまうケースがデメリットとして挙げられます。家賃保証会社が経営不振に陥った場合、新規顧客の減少で保証料収入が減り、保証料収入が減ったために家賃立て替えなどの保証を履行できなくなり、それによって貸主や不動産会社からの信用が無くなり、さらに新規顧客が減る……といった悪循環が発生しやすいです。このようなケースの場合、家賃保証会社の倒産や破産で実害を被るのは「家主さま」です。仮に家賃保証会社が倒産した場合、借主の連帯保証人はいなくなります。家主さまにとってこの上なく不安な状況にはなりますが、それを理由に賃貸借契約を解除することはできないので、そのまま入居させておくほかありません。
5. まとめ
以前は賃貸借契約といえば連帯保証人を立てるのが当たり前でしたが、2020年4月の民法改正などの影響も受け、賃貸保証会社のサービスを利用する方が多数派になりつつあります。入所者さまに賃貸保証会社を利用していただくことで、賃貸経営における最大のリスク「家賃滞納」は、ほぼ100%回避ができます。今回ご紹介したメリット・デメリットを踏まえ、契約会社やサービス内容を精査したうえで賃貸保証会社のサービス導入をご検討されてみてはいかがでしょうか?