クラウドPBXでの失敗パターン8選
よくある失敗事例と6つの成功ポイントも解説
最近では、クラウドPBXの導入がますます一般化していますが、その成功事例とは逆に、失敗事例も多くあります。クラウドPBXの導入においては、様々な懸念点や失敗しやすいポイントが存在するため、注意が必要です。
本記事では、クラウドPBXでの失敗パターン8選を紹介し、さらに、クラウドPBX導入の成功を迎えるための6つのポイントも解説していきます。実際の事例を通じて失敗パターンとその回避策を学び、成功に導くポイントを見出していきましょう。
クラウドPBXとは?
クラウドPBXとは、オフィス向けのインターネット接続型電話サービスです(PBXは「Private Branch eXchange」の略であり、構内交換機・電話交換機を意味します)。従来のビジネスフォンとは異なり、インターネットを通じて複数の電話機を繋げることができます。
従来のビジネスフォンでは、主装置と呼ばれる物理的な機器をオフィス内に設置し、電話回線を使って内線や外線の共有が行われていました。しかし、クラウドPBXではインターネットを介して異なるオフィスの固定電話やスマートフォン、タブレット、PCでも外線と内線を共有することができます。
これにより、社員はオフィスの外でも自身のスマートフォンを使用して会社番号での発着信が可能となります。また、遠く離れた拠点で働く社員同士でも内線通話が実現します。これによってテレワークなど自由な働き方への対応が可能となります。
PBX(固定電話)とクラウドPBXの違い
従来の固定電話であるPBX(構内交換機)は、オフィス内に設置される電話交換システムです。このシステムによって、多数の電話機を接続し、外線や内線通話が可能になります。
PBXは従来から使用されており、一般的なビジネス環境ではよく見られます。接続可能な電話機の台数は限られており、一般的に50台前後となっています。
一方、クラウドPBXはクラウド上に構築されたPBX機能を提供するサービスで、インターネット経由で電話機にアクセスすることができます。
クラウドPBXは個々の拠点ごとに設置する必要がなく、インターネット回線を介して通信が行われるため、場所に制約がありません。
さらに、通常の電話機だけでなく、スマートフォンやパソコン、タブレットといったデバイスでも利用することができます。これにより、従業員は自宅や移動先からでもビジネス用の通話が可能となります。
クラウドPBXの失敗パターン
クラウドPBXの失敗パターンとして以下の8つを紹介します。
- 通話の品質が悪くなった
- 電話番号が変わってしまった
- 導入のタイミングに失敗した
- コスト削減につながらなかった
- FAXが使えなくなった
- 求める機能がなかった
- セキュリティリスクがあがった
- ベンダーの知識が不足していた
失敗パターンを把握しておくことで、自社で導入する際の注意点が分かるようになります。
通話の品質が悪くなった
インターネット経由の通話では、通信速度や安定性に問題がある場合、通話中に音声が途切れたり、遅延したりすることがあります。このような状況では、円滑なコミュニケーションが難しくなります。
また、スマートフォンを利用した場合にも、アプリと端末の相性やアップデート状況によって通話品質が悪化することがあります。一部のアプリでは、特定の機種やOSバージョンとの相性が悪く、通話中に切断されるケースも報告されています。
さらに、端末のアップデートや修理歴も重要な要素であり、不具合が生じた場合には通話品質に影響を及ぼす可能性があります。
電話番号が変わってしまった
クラウドPBXを導入する際、新たな電話回線の導入が必要になることがあります。その際、電話番号が変更される可能性がある点に注意が必要です。
契約書類や公的機関とのやり取りなどで使用している電話番号は重要な情報であり、変更の事前連絡が不十分な場合、関係各所に多大な迷惑やトラブルが生じる可能性があります。
例えば、顧客や取引先からの重要な電話を受け取れず、業務上の問題や信頼性の低下を招くことが考えられます。
また、役所などとの連絡が途絶えてしまうことで、必要な手続きや情報の受け渡しが滞ってしまう可能性もあります。そのため、事前に電話番号の変更を通知し、新しい番号を提供する必要があります。
導入のタイミングに失敗した
ビジネスフォンのリース契約は一定期間縛りがあり、早期解約をする場合には違約金や残債の支払いが必要となります。そのままクラウドPBXに移行すると、二重支払いや高額な費用が発生してしまいます。
この失敗を防ぐためには、クラウドPBX導入前に現在の電話契約を見直すことが重要です。ビジネスフォンのリース契約期間や解約条件を確認し、移行時期を適切に計画しましょう。
また、現在の契約期間とクラウドPBXの契約期間を重ねずに移行することで、コスト面での問題を回避することができます。
コスト削減につながらなかった
企業は通話やデータ管理、自動応答などの基本的な機能を期待してクラウドPBXを導入します。しかし、実際には必要な機能が最初から提供されていないケースもあります。
必要な追加機能を使用するためには高額なオプション料金を支払わなければなりません。このような場合、本来期待したコスト削減効果が得られず、予算超過や経営上の問題となる可能性があります。
このような失敗パターンを避けるためには、必要な追加機能やオプション料金についてしっかりと確認することが重要です。導入前にサービスプロバイダーに問い合わせて詳細な情報を得るか、料金シミュレーションを行うことで、追加費用やコスト削減効果を明確に把握することができます。
FAXが使えなくなった
クラウドPBXでは、従来のFAXや受付電話機、ドアホン、放送スピーカー、留守電専用機器などは利用できません。
特にFAXを使用している会社がクラウドPBXに移行する場合、いくつかの選択肢があります。まず、FAXを廃止することが考えられます。ただし、現在のFAX番号が変更されたり、使い勝手が異なることになるため、利用者にとっては違和感を覚えるかもしれません。
次に考えられる方法は、インターネットFAXへの移行です。インターネットFAXでは、FAX番号が変更されずに利用できる場合もありますが、使い勝手やセキュリティ面での違いが生じます。一部のデジタルファイリングシステムと連携できない場合もあるため、導入前に検討しておくことが重要です。
求める機能がなかった
クラウドPBX導入時に求められる機能は、企業や組織によって異なります。しかし、ある機能を重要視していたにもかかわらず、実際に導入したクラウドPBXサービスではその機能が提供されていなかったというケースは少なくありません。
例えば、音声認識や自動応答といった高度なコミュニケーション機能を求めていた企業が、導入先のクラウドPBXサービスではこれらの機能が利用できない場合があります。このような場合、企業の業務フローにおいて重要な役割を果たす予定だった機能が不足してしまい、失敗と感じることもあるでしょう。
また、一部のクラウドPBXサービスでは特定の機能が提供されないこともあります。たとえば、特定の通信プロトコルやネットワーク機器に対応していない場合や、特定の国や地域での利用が制限されている場合があります。これらの機能制約は事前に確認しておく必要があります。
セキュリティリスクがあがった
クラウドPBXとは、顧客情報などの重要な情報がクラウド上に保存される通信システムです。このようなシステムでは、顧客データや企業の機密情報などが保存されるため、セキュリティは非常に重要です。
サービスのセキュリティシステムによっては、IDとパスワードを知っていれば誰でも情報にアクセスできてしまう可能性があります。例えば、万が一不正アクセスが行われると、顧客情報や社内文書などの機密情報が漏洩する可能性があります。これは企業にとって大きなセキュリティリスクです。
そのため、情報漏えい防止のためには適切なセキュリティシステムを用いたサービスを選択することが重要です。具体的には、二要素認証やIP制限などの強固な認証方法やセキュリティ対策を採用しているサービスを選ぶことが効果的です。
ベンダーの知識が不足していた
ベンダーのスタッフがITに関する知識を持たない事務スタッフだったり、十分なトレーニングを受けていなかったりすることがあります。このような状況では、クラウドPBXの機能や設定方法について十分に理解しておらず、問題の解決やサポート対応に時間がかかる場合があります。
ベンダーの知識不足は、サポート対応の遅さや質の悪さとしても現れます。例えば、企業が問題や障害に直面した際に迅速で適切な対応を得られず、業務の停止や遅延が発生してしまうことがあります。
このようなベンダーの知識不足を防ぐためには、事前にベンダー側の能力や経験について把握しておくことが大切です。
クラウドPBX導入の成功ポイント
クラウドPBX導入の成功ポイントとして以下の6つを紹介します。
- 既存のサービスの契約内容を確認しておく
- 契約後の料金シミュレーションをしておく
- 必要な機能があるかどうか確認する
- 無料トライアルを利用する
- ベンダーの実績やノウハウを確認する
- セキュリティ対策の方法を考えておく
以上の6つのポイントを押さえてクラウドPBXの導入を進めることで、会社のニーズに合った円滑な通信環境が構築できます。
既存のサービスの契約内容を確認しておく
一般的に、ビジネスフォンのリース契約期間は3年から7年に設定されています。クラウドPBXへの移行を検討する際には、このリース契約の残り期間を考慮し、満期まで待つか、違約金や残債を支払って即座に乗り換えるかを慎重に検討する必要があります。
まず初めに、現在のビジネスフォンのリース契約内容を確認しましょう。契約書や取引条件に定められた違約金や解約事由などを注意深くチェックします。特に、「クラウドPBXへの移行」という事項が契約上制限されている場合は注意が必要です。
次に、リース契約の残り期間を確認しましょう。もしまだ数年残っている場合は、クラウドPBXへの移行を慎重に検討する必要があります。なぜなら、契約期間中に解約すると高額な違約金が発生する可能性があるからです。
契約後の料金シミュレーションをしておく
クラウドPBXの契約後に回線や端末の増減が必要になった場合、それに伴う追加費用が発生します。ただし、メーカーごとに増減にかかるコストは異なります。
一部のメーカーでは回線や端末の追加に対して高額な料金を請求するケースもあります。したがって、導入時に検討したメーカーごとの料金体系や追加費用のルールを把握しておくことが重要です。
また、クラウドPBXは初期費用が比較的安価である傾向があります。しかし、機能やオプションを追加する場合はコストが増加することもあります。
たとえば、通話や録音の保持期間の延長、音声認識やAIチャットボットなどの追加機能を利用する際には、追加料金が必要になります。
したがって、契約後の増減やオプション利用時に予想外の費用が発生しないように、契約前に明確な運用計画を立て、料金を事前にシミュレーションすることが重要です。
必要な機能があるかどうか確認する
サービスによって提供される機能やメリットは異なりますので、自社に最適なサービスを選ぶためには、複数のサービスを比較する必要があります。
まず、自社のニーズを意識することが重要です。クラウドPBXに求める機能や特長を明確にしましょう。
例えば、テレワーク環境下で固定電話発着信を実施したい場合や、既存のPBX機能(内線通話・転送機能・通話録音など)を継続して使いたい場合、さらには今後追加したいオプションがある場合など、具体的な要件を整理しておきましょう。
次に、複数のサービスを比較する際には、それぞれの提供する機能やメリットを確認しましょう。例えば、クラウドPBXの中には、通話料金の削減や拡張性が高いといった特長を持つものもあります。これらの情報を把握することで、自社に最適なサービスを選択することができます。
無料トライアルを利用する
無料トライアルを利用することによって、実際の音質や機能を体験することができます。クラウドPBXは会社の通信手段として重要な役割を果たすため、音声のクオリティや通話の安定性は非常に重要です。
無料トライアル期間中に実際に通話を行い、音質や通話品質が自社のニーズに適しているかどうか確認しましょう。
さらに、無料トライアルでは提供される機能を試すことも可能です。クラウドPBXは様々な便利な機能を備えており、例えば自動応答や転送設定、録音機能などがあります。
導入前にこれらの機能が自社の業務に適切であるかどうか確かめることができます。実際に操作してみて使いやすさや効果を評価し、最適なサービスを選択しましょう。
ベンダーの実績やノウハウを確認する
クラウドPBXは企業の通信インフラを担うシステムであり、導入後の運用やトラブル対応にも影響を与えます。そのため、信頼できるベンダーを選ぶことが成功につながるポイントです。
まず、ベンダーの実績を確認するためには、疑問点を洗い出し、的確で分かりやすい回答を求めることが重要です。導入前に自社のニーズや課題を明確化し、それらに対するベンダーの解決策や提案内容を詳しく質問しましょう。
また、過去の導入事例や顧客への取り組み事例なども参考になります。これによってベンダーがどれだけ経験豊富か、実際の業務課題に対してどれほど効果的な解決策を提供できるかを把握することができます。
セキュリティ対策の方法を考えておく
クラウドPBXを導入する前に、提供されるサービスのセキュリティ体制を確認することが重要です。信頼できるベンダーを選び、適切な暗号化技術やセキュリティプロトコルを使用しているか確認しましょう。
さらに、社員に対するセキュリティ教育を強化することも大切です。クラウドPBXのセキュリティに関するトレーニングやガイドラインを提供し、従業員が正しいセキュリティ対策を理解し実践できるようにしましょう。
特に、ハッキングやフィッシングなどの攻撃手法についての教育を行うことで、組織全体のセキュリティ意識が高まります。
クラウドPBXの導入に失敗しないためによく確認しよう
この記事では、クラウドPBXの失敗事例と成功ポイントについて解説しました。クラウドPBXはビジネスにとって多くのメリットをもたらす一方で、導入時の注意点や失敗しやすいポイントも存在します。
クラウドPBXの導入はビジネスにとって大きなメリットをもたらすものですが、失敗を避けるためには慎重な計画と適切な対策が必要です。この記事を参考にしながら、クラウドPBX導入の成功を目指してください。