内装工事費は減価償却できる
内装工事の耐用年数と会計処理時の注意点
内装工事は不動産を改装するための重要な費用ですが、その費用は減価償却できることをご存知でしょうか。
本記事では、内装工事費の減価償却に関する重要なポイントについて詳しく解説します。まずは内装工事の耐用年数について、自社所有物件と賃貸物件の違いを考慮し、会計処理のポイントを確認していきましょう。
また、内装工事費の減価償却費の計算方法や注意が必要な場合についても解説します。内装工事費における減価償却のしくみを理解し、適切な会計処理を行うための知識を身につけましょう。
内装工事にかかった費用は減価償却できる
減価償却は、資産の価値が経年にわたり減少することを考慮して、その減少額を会計上で処理する手法です。内装工事によって導入された資産は、長寿命で耐久性がある場合、減価償却資産として取り扱われることがあります。
内装工事によって設置される資産は、高額かつ長期にわたって利用されるものです。これらの資産は単なる一時的な経費として扱われるのではなく、固定資産として取り扱われ、その価値減少分が減価償却として計上されます。このような資産には、オフィス内の壁や床の改装、家具の交換などが含まれます。
通常、会計処理において経費として計上される費用は「必要経費」と呼ばれます。しかしながら、内装工事費用は一括して全額を必要経費として計上するわけにはいきません。
代わりに、決められた耐用年数にわたって分割され、減価償却費として段階的に計上されます。これにより、資産の価値の減少を適切に反映しつつ、経理処理が行われます。
内装工事の耐用年数とは?
建物や建物附属設備は、経済活動や業務運営などのために使用される資産であり、時間の経過や使用状況に応じてその価値が減少します。このような資産は、減価償却資産と呼ばれ、取得時に支払った費用を一定期間にわたって分割して必要経費とすることが求められます。
国税庁では、建物や建物附属設備の耐用年数を示した耐用年数表を公開しています。この表は、建物の取得時期や種類に応じて定められた法定耐用年数を基準としており、経理上の計算や税務申告などに役立つ情報となっています。
この章では、国税庁の公開している耐用年数表を参考に、以下の耐用年数について、詳しく解説していきます。
- 建物
- 建物附属設備
- 器具及び備品
建物
建物(事務所用・店舗用・飲食店用)の耐用年数を表にまとめました。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
木造・合成樹脂造のもの | 事務所用 | 24年 |
店舗用 | 22年 | |
飲食店用 | 20年 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造・ 鉄筋コンクリート造のもの |
事務所用 | 50年 |
店舗用 | 39年 | |
飲食店用
|
― 34年 41年 |
|
木骨モルタル造のもの | 事務所用 | 22年 |
店舗用 | 20年 | |
飲食店用 | 19年 | |
金属造のもの | 事務所用 骨格材の肉厚が(以下同じ)
|
― ― 38年 30年 22年 |
店舗用
|
― 34年 27年 19年 |
|
飲食店用
|
― 31年 25年 19年 |
|
れんが造・石造・ブロック造のもの | 事務所用 | 41年 |
店舗用・飲食店用 | 38年 |
引用元:耐用年数(建物/建物附属設備)
なお、上記の耐用年数は一般的な目安であり、個別の状況や法律の変更によって異なる場合があります。具体的な取り扱いについては、国税庁の公式ウェブサイトや税務専門家への相談をおすすめします。
また、建物附属設備についても同様に耐用年数が設定されており、具体的な取り扱いや減価償却方法についても適切な情報の参照が必要です。
建物附属設備
建物附属設備の耐用年数を表にまとめました。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
店舗簡易装備 | 3年 | |
アーケード・日よけ設備 |
|
15年 8年 |
給排水・衛生設備、ガス設備 | 15年 | |
電気設備(照明設備を含む。) |
|
6年 15年 |
引用元:耐用年数(建物/建物附属設備)
以上が建物附属設備に関する耐用年数の一覧です。ただし、具体的な建物や設備によっては異なる場合もありますので、詳細な情報は国税庁が公開している耐用年数表を確認することをおすすめします。
所得税申告時や経理上の取り扱いを行う際には、これらの耐用年数を参考に減価償却資産として計上する必要があります。減価償却資産は資産の価値が経年劣化していくものであり、取得時に一括で経費になるのではなく、使用可能期間全体にわたって分割して経費計上されます。
したがって、建物附属設備など各種資産の取得に要した費用は減価償却費として会計上適切に処理する必要があります。
器具及び備品
オフィスや店舗において必要な器具及び備品の耐用年数をまとめました。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
家具、電気機器、 ガス機器、家庭用品 (他に揚げてあるものを除く) |
事務机、事務いす、キャビネット
|
― 15年 8年 |
応接セット
|
― 5年 8年 |
|
陳列だな、陳列ケース
|
― 6年 8年 |
|
その他の家具
|
― 5年 ― 15年 8年 |
|
ラジオ、テレビジョン、テープレコーダーその他の音響機器 | 5年 | |
冷房用・暖房用機器 | 6年 | |
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気・ガス機器 | 6年 | |
氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー(電気式のものを除く) | 4年 | |
カーテン、座ぶとん、寝具、丹前その他これらに類する繊維製品 | 3年 | |
じゅうたんその他の床用敷物
|
― 3年 6年 |
|
室内装飾品
|
― 15年 8年 |
|
食事・厨房用品
|
― 2年 5年 |
|
その他のもの
|
― 15年 8年 |
|
事務機器、通信機器 | 謄写機器、タイプライター
|
― 3年 5年 |
電子計算機
|
― 4年 5年 |
|
複写機、計算機(電子計算機を除く)、金銭登録機、 タイムレコーダーその他これらに類するもの |
5年 | |
その他の事務機器 | 5年 | |
テレタイプライター、ファクシミリ | 5年 | |
インターホーン、放送用設備 | 6年 | |
電話設備その他の通信機器
|
― 6年 10年 |
|
時計、試験機器、測定機器 | 時計 度量衡器 試験・測定機器 |
10年 5年 5年 |
看板・広告器具 | 看板、ネオンサイン、気球 | 3年 |
マネキン人形、模型 | 2年 | |
その他のもの
|
― 10年 5年 |
|
容器、金庫 | 金庫
|
― 5年 20年 |
理容・美容機器 | 5年 |
引用元:耐用年数(器具・備品)(その1)
以上が一部のオフィスや店舗で必要な器具及び備品の耐用年数です。ただし、こちらも個々の事業所や業態によって異なる場合もありますので、具体的な情報については国税庁の公開している耐用年数表を確認することをおすすめします。
自社所有と賃貸での、内装工事の耐用年数の違い
自社所有建物と賃貸物件のそれぞれの耐用年数の違いについて解説していきます。
- 自社所有建物の場合の耐用年数
- 賃貸物件の場合の耐用年数
自社所有建物では原則として建物本体の耐用年数が適用されますが、賃貸物件では賃借契約や更新条件などを考慮し、合理的な耐用年数が見積もられます。以下で詳しく解説してみましょう。
自社所有建物の場合の耐用年数
新築建物においては、耐用年数は法定耐用年数を基準として判断されます。法定耐用年数は建築基準法によって定められており、建物の種類や用途に応じて異なります。例えば、一般的なオフィスや店舗の場合、一般的には20年から25年程度が一般的です。
対照的に、中古物件に関しては、使用可能期間から耐用年数を算出することが一般的です。使用可能期間とは、法定耐用年数から経過年数を引いたものです。さらに、経過年数に20%をかけることで、内装工事によって延長される耐用年数が考慮されます。
計算式は以下の通りです。
使用可能期間 = (法定耐用年数 - 経過年数) + (経過年数 × 20%)
例えば、法定耐用年数が30年であり、経過年数が10年の場合、使用可能期間は(30 - 10) + (10 × 20%) = 22年となります。
ただし、築年数が法定耐用年数を超えている場合、内装費が中古物件の価格の50%を上回る場合には、法定耐用年数に20%をかけて耐用年数を算出することがあります。
これは、建物の老朽化や劣化が進行しており、内装工事による延長が限られているためです。内装費の大部分を占めるため、新築建物同様に耐用年数を適用する場合もあります。
賃貸物件の場合の耐用年数
一般的に、内装工事の耐用年数は合理的に見積もられ、通常は10〜15年とされています。ただし、具体的な耐用年数は内装工事内容や材料の種類などによって異なる場合があります。
また、賃貸物件の場合は契約期間が定められており、これによって内装工事の耐用年数を考えることができます。契約期間が更新可能であったり、有益費の請求や買取請求が可能である場合は、その長さを基準として考慮する必要があります。
一方で、契約期間が更新できず、かつ有益費や買取請求ができない場合は、賃貸期間を耐用年数として取り扱うことができます。この場合、賃借期間全体を基準にして内装工事の償却計算を行います。
また、内装工事の中には建物付属設備に該当するものもあります。例えば、冷暖房設備などは一般的に法定年数が決められていますので、それを利用して耐用年数を判断します。
内装工事における減価償却費の計算方法
ここからは減価償却費の計算方法について説明していきます。
- 定額法
- 定率法
上記の計算方法について詳しく解説していきます。
定額法
定額法は、毎年一定の金額で償却する方法です。この方法は、建物や建物附属設備、無形固定資産、ソフトウェア、生物などに適用されますが、定率法は選択することができません。
定額法における減価償却費の計算方法は、「取得価額 × 定額法の償却率」となります。つまり、取得した資産の金額に対して一定割合を乗じることで減価償却費を算出します。
この方法では、毎年同じ金額で計算されますが、最終年だけは特別です。最終年においては、備忘価額(残存価額)から1円を引いた金額を計上します。
例えば、ある建物を取得した場合を考えてみましょう。その建物の取得価額が100万円であり、耐用年数が10年だとします。この場合、定額法の償却率は1/10(0.100)となります。
定率法
定率法は、年を追うごとに償却費の金額が一定の割合で減っていく方法です。この方法は、主に「備品」に対して使用されます。「建物」と「建物付属設備」には定率法は適用できず、別の償却方法を選択する必要があります。
定率法を使用する場合には、対象年の3月15日までに税務署へ届け出を行う必要があります。この届け出がなされることで、その年から定率法に基づいて減価償却を行うことができます。
では、定率法による減価償却費の計算方法を見ていきましょう。計算式は以下の通りです。
(取得価額 - 未償却残高) × 償却率
取得した資産の取得価額から未償却残高を引き、その差を償却率で乗じることで、当該年度における減価償却費を求めることができます。ただし、注意点として途中で計算式が切り替わることがあります。
内装工事費の減価償却に関して注意が必要な場合
内装工事費の減価償却に関して注意が必要な以下の場合を紹介していきます。
- オフィス移転に伴う内装工事費を減価償却する場合
- 改修工事を行う場合
- 原状回復工事の場合
内装工事は資産価値を高める重要な投資ですので、正確な減価償却処理を行うことは税金対策や企業活動において重要です。専門的な知識やアドバイスを受けることで、適切な会計処理を行いましょう。
オフィス移転に伴う内装工事費を減価償却する場合
まず、オフィス移転時の内装工事も減価償却の対象となります。内装工事にかかった費用は、耐用年数のある資産として扱われるため、一括で経費計上する必要はありません。代わりに減価償却として負担を分散させることができます。
次に、内装の種類によって耐用年数を判断します。例えば、パーティションやカーテンウォールなどの仕切り壁は比較的短い耐用年数を持つため、短期間で経費化される可能性が高いです。一方、床材や天井材などの耐久性がある内装設備は長期間使用できるため、減価償却期間も長く設定されます。
賃借物件の場合は特別な考慮が必要です。賃貸期間の定めがある場合、耐用年数にはその期間を考慮する必要があります。ただし、更新ができない契約や有益費の請求や買取請求ができない契約の場合、賃貸期間を耐用年数として扱うことが一般的です。
改修工事を行う場合
改修工事は、既存の施設や建物に対して行われる工事であり、その目的は資産の機能を向上させることです。例えば、設備の更新や改良、耐震補強などが該当します。このような改修工事における費用は、後述するように資本的支出と修繕費に分類されます。
まず、資本的支出とは、固定資産に関する支出のことを指します。具体的な資本的支出として改修工事費用があげられます。したがって、内装工事を含む改修工事費用も資本的支出として取り扱われます。
一方で、修繕費は固定資産ではなく必要経費として処理されます。例えば、通常の保守・点検作業や小規模な修繕作業がこのカテゴリーに当たります。しかし、内装工事全体が必要経費に計上されるわけではありません。
国税庁の法令解釈通達によると、資本的支出と修繕費の定義が確認できます。具体的な基準やガイドラインに基づいて判断されますので、注意が必要です。
原状回復工事の場合
原状回復工事は、入居当初の水準まで資産の機能を回復させるために行われる工事です。この工事が必要な場合、内装工事費の減価償却に関して注意が必要です。国税庁の法令解釈通達によれば、原状回復工事は基本的に修繕費として必要経費に計上することができます。しかし、注意すべき点もあります。
まず第一に、仕訳時に「原状回復費用」として明確に記載しなければ、資産計上される可能性があることです。原状回復工事の費用は修繕費として計上されるべきですが、明確な指定がない場合は資産計上されてしまう可能性もあるため注意が必要です。
また、資産を廃棄する際は、「固定資産除却損」という勘定科目で計上する必要があります。これは、廃棄される資産に関連した減価償却費用を処理するためのものです。内装工事や原状回復工事が行われた場合でも同様に、適切な処理が必要です。
内装工事費の減価償却では耐用年数を確認しよう
内装工事費は減価償却できるということがわかりました。内装工事費用は資産として扱われ、その耐用年数に基づいて減価償却を行います。
内装工事費の減価償却については、耐用年数を確認し、適切な計算方法を用いることが重要です。また、内装工事の内容や特性によっては、注意が必要な場合もありますので、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
適切な減価償却処理を行うことで、経理面での対応を確実にし、経済的なメリットを享受することができるでしょう。