事務所は防火対象物になる?
防火管理制度の仕組みとするべきこと
事務所の面積や収容する人数によっては、防火管理者を選任する必要があります。
防火管理制度を把握し、万が一の火災に備えなくてはなりません。
本記事はどのような建物が防火対象物になるのかなど、防火管理制度全体について説明していきます。
1. 防火管理制度とはなにか
防火管理制度とは、火災の発生を予防し、かつ万が一火災が発生してしまっても、その被害を最小限に抑えるための対策を考案し、実行することです。
過去の火災発生事例をみてみると、火災発見時の初動対応がスムーズでなかったり、防火設備に不備があったりが原因で火災が拡大するケースが後を絶ちません。
防火管理業務の対応がなされていないと発覚した場合、状況によっては、代表者に対して刑事責任が求められることもあります。
自分たちの安全を守り、被害の拡大を防ぐためには防火管理制度は必須なのです。
防火管理制度の重要性を意識し、徹底することが重要になります。
「自らの生命、身体、財産は自らが守る」が防火管理の原則となります。
日常生活において、誰が何をするべきなのか、火災が突然発生したときにどのような行動を取るのかを普段から考えておかなくてはなりません。
防火管理制度は、火災発生時の行動などを消防計画にまとめ、火気管理や避難施設の管理、火災に備えた避難訓練を行うことです。
建物所有者やテナントの管理代表者は防火管理者を決定し、防火にかかわる業務を実施する義務があります。
防火管理制度を知るうえで、重要な役職が2つあります。
まず管理権限者です。
管理権限者は防火対象物について正式な管理権限を持っています。
防火対象物の管理を法律や契約に基づき、実施するべき人のことです。
管理権限者は防火管理の最終的な責任を持つ者といえます。
株式会社であれば社長が務めるのが一般的です。
次に、防火管理者です。
防火管理者は防火管理業務の推進責任者となります。
防火管理に対する十分な知識を持ち、責任感と実行力を兼ね備え、管理と監督ができる地位にある人が務めなくてはなりません。
防火管理者は防火管理にかかる消防計画の作成や届け出を行ったり、消火設備の点検や整備を実施したりする義務があります。
その他にも、火気使用の監督や、収容人数の管理など、防火管理者の仕事は多岐に渡ります。
2. 防火管理者の種類は収容人員と延べ面積による
防火管理が必要な施設を防火管理対象物といいます。
防火管理対象物は「特定用途の防火対象物」、「非特定用途の防火対象物」に分かれており、対象物の規模により、防火管理者の種類が変わるのです。
防火管理者には乙種と甲種の2種類があります。
乙種は管理できる建物に制限があり、甲種はすべての建物を管理できるのがポイントです。
事務所は基本的に、「非特定用途の防火対象物」に該当することをまずは知っておきましょう。
事務所以外にも、工場や倉庫なども同じカテゴリーです。
収容人員が50人以上で、延べ面積が500平方メートル未満の場合は甲種防火管理者、もしくは乙種防火管理者のどちらでもかまいません。
延べ面積が500平方メートル以上であれば、乙種防火管理者ではなく、甲種防火管理者を置くことになります。
火災発生時に自力で逃げるのが難しい人たちが入所している社会福祉施設などで、人数が10人以上のところは「特定用途の防火対象物」に該当します。
延べ面積に関係なく、管理できるのは甲種防火管理者だけです。
飲食店、劇場、ホテルなどの施設も「特定用途の防火対象物」に該当します。
こちらは延べ面積によって管理資格が変わることを覚えおきましょう。
延べ面積が300平方メートル以上の場合は甲種防火管理者のみ管理が可能で、300平方メートル未満であれば、乙種防火管理者でも管理できます。
3. 防火管理者になれるのは管理的な地位にある人
防火管理者は誰でもなれるものではありません。
管理的または監督的な地位にあり、防火管理に関する知識と資格を持つ人だけがなれるのです。
資格は消防長などが実施する防火管理講習を修了する、もしくは防火管理者として必要な学識経験を持つと認定された人に付与されます。
防火管理講習の期間は乙種と甲種で異なるので注意しましょう。
乙種防火管理者は1日だけですが、甲種防火管理者の資格は2日間かかります。
資格や学歴によっては、講習を受けなくても、防火管理者になれる場合があります。
例えば、警察関係の仕事で3年以上、管理や監督の職務経験がある人なら講習は必要ありません。
その他にも、総務大臣の指定した防災に関する学科や課程の学校を卒業し、1年以上の防火管理経験や、消防職員として1年以上の管理や監督経験がある人も該当します。
4. 防火管理者はまず消防計画を作成する
防火管理者がおこなう作業はさまざまですが、防火管理にかかる消防計画の作成が特に重要です。
防火対象物やテナントで火災が発生することを防ぐと同時に、火災が発生したときの被害を最小限におさえるための施策を行います。
消防計画は職場内の人全員に周知し、守らせなくてはなりません。
ここでは防火管理にかかる消防計画で特に大事なものをピックアップして解説します。
まず、自衛消防活動です。
火災が発生したときの消防活動について決めておかなくてはなりません。
火災に備え、いくつかの班を結成しておきましょう。
消防機関への通報、および情報収集をおこなう「通報・連絡班」、消火器や屋内消火栓による初期消火を実行する「初期消火班」、避難者を誘導し、逃げ遅れを防ぐ「避難誘導班」などが一般的です。
火災が発生時、防火管理者が自営消防隊長となって、これらの班を指揮統制したり、消防隊への情報提供を行ったりします。
自営消防隊長が不在のときに備えて、代行者になれる副リーダーを複数決めておくのも大切です。
営業時間によって従業員や勤務体制が大きく変わるのであれば、少人数で機能する組織を別で編成するようにしておきましょう。
自衛消防訓練の定期的な実施も必ず実施すべきです。
体制だけ決めても、実際に訓練をしておかなくては火事がおこったときにスムーズには動けないでしょう。
訓練の種類は消火訓練、避難訓練、通報訓練があります。
訓練の回数は施設によって変わってくることを覚えておきましょう。
事務所や工場などの非特定防火対象物であれば、消防計画に定めた回数、訓練をおこなえばそれで問題ありません。
病院や介護施設などの特定防火対象物は消火訓練と非難訓練を最低でも年に2回以上実施する決まりとなっています。
火災だけでなく、地震、強風などの災害や大規模テロに対する備えも準備しなくてはなりません。
風水害の対策としてはハザードマップで危険実態を把握するアプローチが有効です。
浸水の危険があるケースでは防水板や土のう等を設置しておくようにしましょう。
大規模テロに関する警報が発令された際の自衛消防活動要領を作成しておくのも重要です。
その他にも、火災予防上の自主検査や避難施設の維持管理なども、消防計画を立てるうえではずせません。
火気設備の点検方法をしっかりとマニュアル化しておくことで火災を事前に防ぐことができるでしょう。
避難経路に障害物があると避難に支障をきたす恐れがあります。
防火戸や防火シャッターの近くに、障害となるものを置かないようチェックしていきましょう。
5. 「自分の命と財産は自分で守る」が鉄則
防災は日々の業務とは直接関係がありません。
頻繁に起こるようなものでもないので、意識は薄れがちですが、備えがなければ非常事態のときに大惨事になる恐れがあります。
防火管理制度の仕組みを理解し、しっかりとした消防計画を作成しておくようにしましょう。
どんなときでも、自分のことは自分で守る気持ちを忘れないことが大切です。