事務所の移転にかかる費用は?
オフィスの引っ越し費用の相場とコストの節約方法
事務所の移転には、さまざまな費用がかかるため、計画する上で重要なポイントとなります。しかし、どのような費用がかかるのかなかなか把握しづらいという方も多いことでしょう。
本記事では、オフィスの引っ越しにかかる費用の相場について詳しく解説します。旧オフィスから退去する際にかかる費用、新オフィスに入居する際にかかる費用、そして新オフィス構築にかかる費用など、それぞれの項目について詳しくご紹介します。
また、費用を抑える方法についても解説していきますので、参考にしていただければ幸いです。
事務所の移転にかかる費用の種類
新しい場所でのビジネス展開を可能にしたり、より効率的なオフィス環境を作るためには、様々な費用がかかります。ここでは、事務所の移転にかかる費用として、以下の4種類について説明していきます。
- 引っ越しの費用
- 新オフィスの費用
- 原状回復にかかる費用
- その他の経費
1. 引っ越しの費用
自社で作業を行う場合は引っ越しの費用は発生しませんが、社員数や荷物量が増える場合、引っ越し業者に依頼する必要が出てくることもあります。
引っ越し業者の料金は、「時間制」と「距離制」の2つの方式があります。時間制では基礎となる時間が「4時間」と「8時間」の2種類あり、追加料金は1時間ごとに発生します。
一方、距離制では100㎞が基準となり、超過距離によって追加料金が発生します。また、休日や深夜に依頼した場合は割増料金がかかります。
社員数が多い場合、作業時間も長くなり、費用も増える可能性があるため注意が必要です。さらに、オフィス家具の持ち出しも時間を要する要素ですので、それらも含めて見積もりを行うことが重要です。
2. 新オフィスの費用
新しいオフィスで事業を始めるには、不動産取得費用、内装工事費用、ネットワーク工事費用、そして什器購入費用が必要です。
まず、不動産取得費用は新オフィスを取得するための費用であり、場所やエリアによって異なります。都市部のビジネス街や交通の便のよい場所にある不動産は高価な傾向があります。
他方で、郊外や人通りの少ない場所にある物件は低価格で手に入れられますが、利便性が悪くなる可能性があります。
内装工事費用は一般的に1坪あたり10万円を目安としており、デザインや要望によってその額は変動します。例えば、シンプルな作業スペースであればコスト削減が可能ですが、贅沢なデザインやニーズに合った設備を備えた場合、相応の追加費用が発生します。
次にネットワーク工事費用についてです。LANや電話・電気などのインフラ整備が不可欠であり、1人当たり5万円からの費用が見積もられます。また、オフィス内での無線LAN環境を構築する場合は、ルーターやアクセスポイント等の導入費用が必要になる点も注意が必要です。
最後に什器購入費用についてです。什器購入費用は必要な家具や設備を新規調達するための費用となります。新しく購入する場合は予算配分が必要ですが、転用出来る什器であればコスト削減が可能になる場合もあるため、検討することが重要です。
3. 原状回復にかかる費用
オフィスを退去する際には、原状回復にかかる費用が発生します。これらの費用は、旧オフィスを修繕するための費用として請求されます。修繕費は入居者が故意または過失によって損耗・毀損した場合や善管注意義務違反を行った場合に支払われるものです。
具体的には、壁紙や床材の汚れや損傷、照明器具やエアコンの故障などがその対象となります。一方で、経年劣化や通常損耗による修繕費は借主の責任ではありません。不動産管理会社などに確認し、支払義務の有無を事前に確認しておくことが重要です。
4. その他の経費
旧オフィスを退去する際には、水道料金や電気料金の清算が必要になります。また、新しいオフィスへ移転する場合には、名刺や封筒の変更、挨拶状の作成なども必要な諸経費です。
これらは、移転に伴う必要な手続きや対応にかかるコストであり、会社を運営する上で欠かせないものと言えます。
旧オフィスの退去にかかる費用の相場
ここからは、旧オフィスの退去にかかる以下の3つの費用の相場を説明していきます。
- 廃棄物の処理費用
- 原状回復費用
- 賃料
1. 廃棄物の処理費用
不要家具を単純にごみとして廃棄する場合、最も高い費用がかかります。その理由は、この種の廃棄物は産業廃棄物として扱われるため、専門業者によって処理される必要があるからです。廃棄処理費用の相場は、2トン車で7~8万円、4トン車で12~15万円程度と言われています。
売却可能な家具や機器は、実際に売却することがおすすめされています。また、一部の資源として再利用できるアイテムもあります。この場合には家具類の売却を検討し、価値が付かない場合にのみごみとして廃棄することが望ましいでしょう。
2. 原状回復費用
原状回復工事は、オフィスを解約する際に、契約時の状態へ戻すための工事です。費用の相場は小・中規模オフィスの場合、一坪あたり2〜5 万円程度、大規模なオフィスの場合、一坪あたり5〜20 万円程度になります。
原状回復工事が必要な場合、その費用は賃借人の負担になります。したがって、賃借人が物件を引き渡す際には、原状回復工事に必要な費用が発生することがあります。
原状回復工事の費用については敷金など事前に約定されたものがある場合もあります。また、契約書に明記されていなくても、原状回復工事にかかる費用は賃借人が全額負担しなければならないという法的な規定があります。
そのため、残された使用期間や物件の状態を考慮して、早目に原状回復工事に取り掛かることが重要です。
3. 賃料
一般的に、旧オフィスの賃料相場は、1ヶ月分の賃料がかかるということが多いです。つまり、例えば6月30日まで使用する場合、6月分の賃料を払うことになります。
また、退去する日付が契約終了日ではなかった場合にも、賃料が発生します。
例えば契約終了日が7月31日で、6月30日に退去した場合でも7月分の賃料が発生してしまいます。そのため、退去時期をしっかり考慮した上で計画的に進めることが重要です。
新オフィス入居の際にかかる費用の相場
続いて、新オフィス入居の際にかかる以下の4つの費用の相場を説明していきます。
- 敷金・礼金
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 保証会社の加入費用
1. 敷金・礼金
通常、事業用の賃貸オフィスでは敷金が必要ですが、礼金が発生することはほとんどありません。この理由は、事業用の場合は一定期間以上契約することが多く、継続的な取引が前提であるため、オーナー側も入居者側も長期的な関係を築くことが重視されるからです。
具体的には、敷金の相場は、物件の年数や面積、立地条件等によって異なります。また、地域や都市部かどうかでも変動します。例えば東京都心部では基本的に高額であることが多い一方で地方都市部では安価である傾向があります。
礼金が発生する場合、物件の状態や交渉次第で金額は大幅に変わります。商談においては、入居する企業側が経営状況などを説明した上で、オーナー側と協議し合い条件を打ち出す必要があります。
2. 仲介手数料
オフィスを契約する際には、不動産会社が物件を紹介し契約交渉の仲介を行います。この際、不動産会社に支払う手数料が仲介手数料です。
仲介手数料の相場は賃料の1ヶ月分である場合が多く、当然物件価格が高額であれば仲介手数料も多くなる傾向があります。しかしながら、仲介手数料は「宅建業法」によって上限が定められています。
3. 火災保険料
火災保険は、万一火災が発生した場合に借主が貸主に対して損害賠償責任を果たすための保険料であり、賃貸借契約を交わす際には損害賠償火災保険の加入が求められる場合がほとんどです。
新オフィス入居の際にかかる火災保険料の相場は、2年間の契約で2万円ほどですが、建物の規模や所在地、使用目的などによって異なります。また、火災保険料は補償内容によっても変わるため、事前に自分たちのニーズにあった補償内容を確認することが必要です。
4. 保証会社の加入費用
新しいオフィスに移転する際、賃貸オフィスにおいて保証会社の加入が要求される場合があります。この保証会社は、借主が賃料を滞納した場合、貸主に代わって支払う滞納保証のサービスを提供します。一方、借り手から見れば、保証会社を利用するためには費用がかかりますし、もし滞納した場合には督促があるためほとんど利点がないように思えます。
しかし、保証会社を利用するメリットもあります。特定の業種や立地条件などで競争力を担保するためにはアピールポイントを多く持っていることが求められます。そのため、信用力不足であったとしても、保証会社を通じてその不足分を補完することができるのです。
保証会社の加入費用の相場は、契約時に賃料と管理費の合計額の100%、以降は年間2~4万円と言われています。
新オフィス構築にかかる費用の相場
次に、新オフィス構築にかかる以下の5つの費用の相場を説明していきます。
- 引っ越し費用
- 内装工事費
- 備品・オフィス家具の購入費用
- 電話・LAN工事費用
- 提出書類作成費用
1. 引っ越し費用
オフィス引越しの費用相場は、まず移転先のオフィスがどのような状況かによって変動しますが、従業員一名につき、2〜5万円程度とされています。
建物内で上階や下階に位置している場合や、エレベーターの利用ができない場合は追加料金が発生することもあります。
特に、荷物の量やサイズに問題がある場合はクレーン作業を行う必要もあり、その分追加費用がかかることも考えられます。
2. 内装工事費
内装工事には、床・壁・天井の表装や会議室・パーティションなどの設備の整備が含まれます。工事業者によっては、内装工事と設備工事を一貫して対応できる場合もありますが、内装工事のみまたは設備工事のみに対応している場合もあります。
一般的な相場としては、1坪あたり25万円〜40万円程度とされています。しかし、立地や規模、また工事内容によって大幅に変動することもあります。また、素材やデザイン性などによっても価格帯は大きく異なるため、見積りを取る際は細かく確認する必要があります。
3. 備品・オフィス家具の購入費用
オフィス家具購入費用の一般的な相場としては、1人あたり10万円から30万円程度とされています。これは社員数や業種、新オフィスの広さによっても異なるため、あくまでも目安と考えてください。
具体的な購入品目としては、デスクや椅子、パーティション、ワゴン、応接セット、カウンターなどがあります。デスクや椅子は個人が使用する物品ため妥協できない部分ですが、他のアイテムは経費節減のため中古品を利用することもできます。
4. 電話・LAN工事費用
電気・電話・LAN工事には1人あたり5万円から8万円程度の費用がかかると言われています。この金額には、配線やコネクター、設備などが含まれています。
次に、LAN工事の料金ですが、設置ポート数によって異なることがあります。1ポートあたり2.5万円から4万円程度と計算される場合もあります。また、通信速度が高いほど料金も高くなる傾向にあります。
さらに、新オフィスにICTの基盤を整備する場合、システム構築費用もかかります。これにはサーバー構築やデータセンターの利用料などが含まれます。
ただし、これらの費用はあくまで目安であり、個別の条件や要望によって変わってくることがあります。例えばオフィスの規模やレイアウト、通信回線の品質やバックアップ体制などによっても費用は異なってくるでしょう。
5. 提出書類作成費用
オフィス移転時には、税務署や法務局、社会保険事務所などにさまざまな書類を提出する必要があります。このため、自社で対応する場合もあることは事実ですが、一般的には行政書士など専門家に依頼することが多いのが現状です。
まず、提出書類作成費用の相場を言えば数万円から数十万円程度という範囲内で収まっています。ただし、この金額は会社規模や移転先の自治体、必要な書類の種類・枚数によって変動します。具体的な見積もりを取る際は上記の点を考慮しておく必要があります。
事務所の移転費用を節約する方法
事務所の移転費用は、予想外に高額なものとなりがちです。しかし、適切な方法を用いれば、その負担を軽減することができます。
そこで、オフィス移転費用を節約するための3つの方法をご紹介します。
- オフィス家具や備品を再利用する
- 複数の業者から相見積もりをとる
- オフィス移転作業をトータルで任せられる業者に依頼する
1. オフィス家具や備品を再利用する
新品のオフィス家具は高額であり、コスト負担が増える傾向にあります。さらに、購入手続きや組み立て作業なども必要です。そのため、可能であれば旧オフィスで使用していた家具のうち、再利用できるものは再利用する方向で検討することが有効です。
例えば、デスクやチェアなど基本的な家具は、比較的長期間使用されることが多く、十分な耐久性がある場合が多いです。また、旧オフィス内で不要になった家具を他部署へ譲渡することも可能です。
さらに、中古のオフィス家具の購入も検討することもおすすめです。中古品でも、比較的新しいものやほとんど使用されていないものがあります。リーズナブルに設備を整えたい場合は、中古品を利用することで高額な負担を減らすことができるかもしれません。
2. 複数の業者から相見積もりをとる
同じ工事内容でも、業者によって見積もり金額が異なるため、一社だけに依頼すると高額な費用がかかってしまう場合があります。そこでオフィス移転費用を抑えるためには、複数の業者から見積もりを取ることが必要不可欠です。
ただし、ビルによっては指定業者以外への依頼が制限される場合があります。その場合は指定業者からしか見積もりを取得できませんので注意してください。
3. オフィス移転作業をトータルで任せられる業者に依頼する
オフィス移転をトータルでサポートできる業者なら、シームレスな移転手続きを実現するだけでなく、必要な設備工事や不用品処分等の幅広い作業まで一括して対応してくれます。それにより、個別業者への発注が削減され、ムダな費用も抑えられます。
また、オフィス移転業者は、熟練した作業員によってタイムリーかつ確実な作業を行うことができます。これにより、時間的ロスやトラブルが発生するリスクも低減されます。
事務所の移転費用は専門業者にまとめて依頼がお得!
オフィス移転には、旧オフィスの退去費用・新オフィス入居の際にかかる費用・新オフィス構築にかかる費用などがあり、それぞれに相場があります。
さらに、専門業者にまとめて依頼することでコストを削減することができます。オフィス移転を検討している企業の方は、この記事を参考に移転費用のイメージを持ち、節約のための方法を考えてみてください。