チェックリストでスムーズなオフィス移転を!
「引っ越しやることリスト」を作ろう
ビジネスの拡大や経費削減のため、オフィス移転を考える企業も多いことでしょう。しかし、オフィス移転は住宅の引っ越し以上に多岐に渡る手続きが必要であり、準備を怠ると予期せぬトラブルが起こることもあります。
本記事では、オフィス移転に伴う様々な「やるべきこと」を、スケジュール順にまとめてみました。
移転完了までの流れを把握しリスト化することは、何から手をつければよいのか迷っている方にもおすすめです。ぜひ本記事を参考に、自社のチェックリスト作成に役立ててください。
移転完了までの流れ
基本的なオフィス移転のプロセスは、以下の通りです。
- 計画の立案
- 移転先の選定
- 現在のオフィスの解約
- 新オフィスのレイアウト決定
- 業者の手配
- 引越し
- 原状回復の工事
- 移転の届出
最初に移転の目的や予算、スケジュールなどを設定して、移転先の物件を探します。契約が成立したら、今のオフィスの解約に向けて6か月前頃に解約通知をしましょう。新オフィスのレイアウトは、ヒアリング調査や平面図を元に決定します。
業者の選定には、価格や作業内容の比較検討、口コミを確認することが重要です。引越し作業では、搬出・搬入の手順や荷物の管理などに注意して実施しましょう。最後には、旧オフィスを原状回復するため、工事が必要となります。
また、移転した事実を役所へ届け出たり、電話番号や住所の変更手続きを済ませたりするのも忘れずに行いましょう。スケジュールは、各段階でタスクを明確化し、チェックリストを作成しておくことでより分かりやすくなります。
次章でこれらの詳細をスケジュールに沿って解説していきますので、順調に計画を進めて、円滑なオフィス移転を実現しましょう。
オフィス移転のチェックリスト(30坪程度を想定)
ここからは、移転先オフィスの規模を30坪程度と想定した場合のチェックリストを、以下のような時系列順に解説していきます。
- 移転8~7ヶ月前のチェックリスト
- 移転6ヶ月前のチェックリスト
- 移転5~4ヶ月前のチェックリスト
- 移転3~2ヶ月前のチェックリスト
- 移転1ヶ月前~当日のチェックリスト
- 移転後1ヶ月以内のチェックリスト
移転作業においては、計画的な準備とチェックリストの活用が成功の鍵となります。
1. 移転8~7ヶ月前のチェックリスト
移転8~7ヶ月前の段階でチェックすべき項目には以下のようなことがあります。
- 方針の策定
- 移転先の選定
まずは、移転の方針を策定し、その方針に沿って移転先を選ぶことが肝要です。移転先の立地や場所、相場、家賃やコスト、最寄駅からの所要時間、社員の通勤時間や費用の増減など、様々な観点から移転先を検討していく必要があります。
方針の策定
移転の8ヶ月前までには、移転の方針を策定することが重要です。この段階で、移転の目的や移転後に達成したいことを整理するとともに、担当者やプロジェクトチームを発足させ、現オフィスの課題を洗い出す必要があります。
また、30坪程度のオフィス移転には、少なくとも8ヶ月以上の期間を要するため、移転の8ヶ月前までには、チェックリストを作成する必要があります。スケジュールは、営業をスタートさせる予定日からさかのぼって計算し、やるべき工程や期限を含めて決めていきましょう。
移転先の選定
移転の8〜7ヶ月前の段階で、移転先の物件探しを始めることも大切です。物件探しにあたっては、立地条件や社員の通勤時間・費用、家賃・共益費・保証金・更新料などのコストを確認する必要があります。
また、オフィスの設備や周辺環境についてもチェックしておきましょう。通信キャリア・空調・セキュリティなどの設備面や、飲食店・銀行・医療機関などの周辺環境も、働きやすさに大きく関わってくるため、確認しておくことをおすすめします。
現地確認を行う際には、ビルの専有部分の設備、景色、方角なども気にしたいところです。また、退社時刻が遅くなっても不安がないように、治安も確認しておくとよいでしょう。
以上の点を踏まえ、移転先の選定に十分な時間と労力を割くことが成功への重要なステップとなります。
2. 移転6ヶ月前のチェックリスト
移転6ヶ月前の段階でチェックすべき項目には以下のようなことがあります。
- 現オフィスの解約に向けた手続き
- 新オフィスの契約と内装工事へ向けた移転先の現地調査
この時期のチェックリストには、現在のオフィス解約に向けた手続きや新オフィスの契約と内装工事へ向けた移転先の現地調査が含まれます。
現オフィスの解約に向けた手続き
一般的には、退去予告をオーナーやビル管理会社に6ヶ月前に出すことが必要ですが、オフィスの規模や立地によっては3ヶ月前の場合もあります。
オフィスの解約に伴い、賃貸契約書からは敷金・保証金の扱いや原状回復工事の範囲についても確認する必要があります。
また、解約予告日は原則として変更できないので、社内で話し合いをして退去準備を進めるスケジュールを決めることが重要です。注意すべき点として、移転先のオフィスが決まる前に解約手続きを進めても、移転できない場合があるため、移転先をしっかりと検討してから解約手続きを進めることが望ましいです。
新オフィスの契約と内装工事へ向けた移転先の現地調査
6ヶ月前には移転先の契約の取り交わしや、内装工事前の現地調査が必要です。具体的には、家賃コストを計算し、賃料・共益費・敷金・保証金・更新料・礼金などに注意して契約前に移転後に掛かる費用をシミュレーションしておきます。
さらに、家賃の二重払いを防ぐために、不動産業者と交渉して1ヶ月程度のフリーレント期間を得られるか確認することも重要なポイントです。
また、オーナーとの契約時に、工事区分や消防設備工事の有無を確認することも必要です。内装工事についても、契約してもテナント指定の内装工事会社が工事できない場合があるため、契約前に内装工事会社を確認することが望ましいでしょう。
3. 移転5~4ヶ月前のチェックリスト
移転5~4ヶ月前の段階でチェックすべき項目には以下のようなことがあります。
- オフィスレイアウトの検討・決定
- 電話・OA機器を移設するか購入するか検討
- 運搬業者の検討・決定
この時期には、レイアウトの検討、電話やOA機器の移設や購入、運搬業者の選定など、多岐にわたる項目を把握・検討し、段階的に進めることが必要です。
オフィスレイアウトの検討・決定
この段階で行うべきこととして、まずは部署ごとに必要なスペースを洗い出し、エントランス、会議室、応接室、休憩室、収納庫など、執務室以外の配置を考えることが大切です。
そして、専門業者のアドバイスを参考にしつつ、具体的なレイアウトプランを作成します。
この際には、当初の移転目的に適ったレイアウトかどうかを確認することが必要です。たとえば、社員増員に備えたスペース確保や、ブランディング戦略に合わせた配色などが含まれます。
また、オフィス家具の選定や発注なども考慮し、移転4ヶ月前ぐらいまでに決めておくことが望まれます。レイアウトや家具に関する決定を早急に行うことで、作業効率の向上や社員の作業環境改善など、様々なメリットが得られるでしょう。
電話・OA機器を移設するか購入するか検討
この段階では移転日に合わせて、オフィス家具やOA機器の発注をすることも必要になります。
また、移転後にも使うことができるオフィス家具と買い替える必要があるものを選別し、コンセプトに沿って判断することが重要です。
新たなオフィス家具やOA機器を発注する際には、複数の業者で見積もりを取って比較することで費用を抑えられますが、費用の安さを追求するあまり、質の悪い業者に依頼してしまうことにならないよう注意が必要です。
運搬・工事業者の検討・決定
オフィス移転には、運搬や工事など、多くの準備が必要です。特に、移転が実行される5~4ヶ月前の段階で、引越し業者や各種工事の業者を選定し、手配する必要があります。
複数業者から相見積もりを取り、コストを抑えることが成功する大きなポイントです。費用だけでなく、廃棄物や不用品を回収してくれるサービスがあるかどうかも確認するようにしましょう。
また、工事内容によってはこちらで業者を選べず、移転先オフィスの管理会社が業者を指定していることもあります。そのため、移転前には、オフィス管理会社に問い合わせ、業者の選択方法や条件を確認する必要があります。
4. 移転3~2ヶ月前のチェックリスト
移転3~2ヶ月前の段階でチェックすべき項目には以下のようなことがあります。
- 電源・電話 LAN配線工事
- 挨拶先リスト、挨拶状作成
- 社内印刷物、ホームページの住所変更準備
- 社員への通知
移転計画において、重要な段階に入ります。移転計画全体を円滑に進めるために、しっかりと準備を行っていきましょう。
電源・電話 LAN配線工事
電源、電話、LAN配線工事の準備は移転3〜2ヶ月前の段階で必須です。これらの工事は、専門的な知識が必要であり、事前に業者や専門家に相談して、設計や見積もりを依頼することが大切です。
特に、LAN配線工事については、ネットワーク機器の設置場所や配線のルート、壁面の穴あけ位置など、細かい設計が必要となります。また、電話回線の転用や新規契約手続きも、電話会社によって手続きの内容が異なるため、早めに確認しておきましょう。電源に関しては、設備の電力容量や、コンセントの数や位置などを確認しておく必要があります。
これらの準備が不十分だと、移転先での業務に支障が出る可能性があるため、余裕をもって準備を進めることが重要です。
挨拶先リスト、挨拶状作成
挨拶先リストと挨拶状の作成を忘れずに行いましょう。挨拶先リストは、取引先以外にも業務委託先の会計士事務所、弁護士事務所などや、各種加入団体、定期購読している雑誌・新聞、さらには会員制サービスなども含まれます。
事務所移転時には通知を行う必要があり、特に会員制サービスについては、配送先の変更を早めに伝えておくことが望ましいです。
社内印刷物、ホームページの住所変更準備
オフィス移転が近づくと、移転先の準備だけでなく、3〜2ヶ月前の段階で住所変更対応を進めておくことをおすすめします。具体的には、社内印刷物やホームページの住所変更を準備しましょう。
ホームページやメール署名の住所変更は特に重要で、外部に委託している場合は、委託先に早めに連絡して変更内容を相談することが必要です。また、移転先住所がわかり次第、早めに印刷物や社章を新しい住所に差し替えるために発注するのも忘れずに行いましょう。
社員への通知
スムーズな移転作業をするためには、社内の協力が必要であり、早い段階で移転計画を共有することが重要です。社員が個々に行わなければならない準備を明確にするだけでなく、新住所に修正した印刷物の発行などは社内業務になるため、担当者を決めて任せることも必要です。
また、移転する際には、社員が「捨てるもの」「残すもの」「持っていくもの」をリスト化し、移転当日までに荷物を選別・梱包しておくことも重要です。
こうした社内の準備や協力体制が整っていれば、移転作業は多少のトラブルは発生するかもしれませんが、スムーズに進行するでしょう。さらに、社員に十分な情報を提供し、移転に対する不安や疑問点に応えることも、円滑な移転作業には不可欠です。
移転作業が円滑に進むことで、新しいオフィスでの業務が早く始められ、企業のスムーズな運営ができるようになります。
5. 移転1ヶ月前~当日のチェックリスト
移転1ヶ月前~当日の段階でチェックすべき項目には以下のようなことがあります。
- 搬入出立会い
- 物件引き渡し・内装工事確認・電話移設
- 取引業者へ連絡
これらは移転当日にトラブルが生じることを防止するためにも、欠かせないポイントです。
搬入出立会い
荷物の搬出・搬入時にトラブルを避けるために、新旧オフィスそれぞれでの立ち合いが必要です。
まず、壁や床に傷があった場合には、自分たちがつけたものではなくとも養生前に撮影しておきましょう。また、荷物が漏れなく届いているか、破損がないかを確認し、このような立ち合いには、オフィス移転の責任者が同席していることが望ましいです。
さらに、業者との打ち合わせで、搬入が行われる際に注意するべきポイントを把握しておくことや、荷物の保険についての確認をしておくことも大切です。
物件引き渡し・内装工事確認・電話移設
移転当日には内装工事の確認や電話移設のチェックなどを行う必要があります。内装工事については、図面通りに工事が進んでいるかをチェックし、問題がある場合は追加工事を依頼することが必要です。
また、電話移設については、移転先でのテストコールを行い、正常に通話できるかどうかの確認を忘れずに行うことが重要です。
取引業者へ連絡
1ヶ月を切る頃には、取引先への連絡を早急に行います。新しい住所を伝えることはもちろん、警備会社やリース会社、加入団体などについても連絡リストに含め、書面で連絡するようにしましょう。
契約書などには前の住所が記載されているケースがあるため、新しい住所に変更する必要がある場合は、取引先と話し合って決定する必要があります。取引先への連絡は、余裕を持って行いましょう。
一般的には、1ヶ月前から2週間前にハガキかメールなど通達するのが良いでしょう。
6. 移転後1ヶ月以内のチェックリスト
移転後1ヶ月以内でチェックすべき項目には以下のようなことがあります。
- 旧オフィスの原状回復工事
- 各機関や銀行などへの届け出
これらは移転後必ず行わなければいけないことであり、また、完了までの期限が短いため、早くから準備を始めておくとよいでしょう。
旧オフィスの原状回復工事
オフィス移転が完了したら、旧オフィスで原状回復工事を行う必要があります。原状回復工事は、旧オフィスを使用する前の状態に戻すことが目的です。建物の所有者や不動産会社との契約によって、原状回復の項目や期間が異なるため、早めに内容を確認しておくことが重要です。
原状回復作業には、家具・備品・パーテーションなどの撤去、床や壁の傷を元に戻すこと、床や壁のクリーニング、さらには照明器具や空調設備の取り外しや修復などが含まれます。これらの作業は、プロの業者に依頼することが望ましいです。
また、引き渡し前に、原状回復工事が適切に行われているか必ず確認するようにしましょう。
万が一、不備があった場合には追加費用が発生することもあるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
工事が完了したら、原状回復工事にかかった費用が適正かどうかも確認しておくようにしましょう。
各機関や銀行などへの届け出
移転後は各機関や銀行などへの届け出を速やかに行う必要があります。以下の表に主な手続き内容と申請期限などをまとめましたので、参考にしてください。
提出機関 | 提出書類 |
---|---|
法務局 | 移転後2週間以内に「本店移転登記申請書」を提出(支店は3週間以内) |
税務局 | 移転後1カ月以内に「事業年度、納税地、その他の変更異動届出書、本店移転登記申請書/給与支払事業所等の開設・移転・廃止届出書」を提出 |
都道府県税事務所 | 移転後1カ月以内に「事業開始等申告書」を提出 |
労働基準監督署 | 労働保険名称・所在地等変更届は保険関係が成立した日の翌日から10日以内、労働保険確定保険料申告書は保険関係が消滅した翌日から50日以内、労働保険概算保険申告書は保険関係が成立した日から50日以内、成立届は保険関係が成立した日の翌日から10日以内に提出。 「適用事業報告書(様式23号の2)、その他に就業規則(変更)届、時間外労働・休日労働に関する協定届/安全衛生法に関するもの。安全管理者選任報告(様式第3号)・衛生管理者選任報告(様式第4号)・産業医選任報告(書式第4号)」については移転後停滞なく提出 |
公共職業安定所 | 変更のあった日から 10日以内に提出 |
郵便局 | 移転先が判明したら、速やかに連絡 |
銀行・クレジットカードなど | 移転後速やかに(期限は銀行・起業により異なる) |
やることチェックリストを作成してスムーズなオフィス移転を!
オフィス移転は、手続きやスケジュール管理が必要で、失敗すれば大きなトラブルにつながりかねません。そこで、早めの段取りとスケジュールの管理が重要です。
オフィス移転には多くの手続きが必要ですが、チェックリストがあれば、逐一確認を取りながらスムーズに進めることができます。移転先の情報収集から始め、各手続きの期限や適切な役所との連絡方法まで、しっかりと確認しておくことが大切です。ぜひこの記事で紹介した内容を参考に、オフィス移転を成功させてください。