オフィスの原状回復費用の相場はいくら?
想定より高い費用を請求されたとき
いままで使用してきたオフィスの退去時に、必ずかかる費用として準備しなければならないものは原状回復費用です。
しかし、いざ見積もりを確認してみると想像していた以上に高額で、「もう少し安くできないものか」「これは適正な価格なのだろうか」など、さまざまな疑問が生じることがあるでしょう。
原状回復にかかる費用の相場を知っておけば、安心して工事を依頼することができます。
また、万が一想定していたよりも高い見積額であったときの対策について、くわしくみていきましょう。
1. 原状回復とはなにか
賃貸住宅を明け渡すときに、原状回復費用を請求されることがありますが、オフィスも同様に退去の際には原状回復費用を請求されるでしょう。
原状回復とは、住宅やオフィスなど賃貸していた場所の契約が終了したときに、借りたときの状態に戻してから貸し主に返すことを指します。
また、一般的には、契約時に賃貸借契約書を取り交わす際に、原状回復について事前に取り決めがされていることがほとんどです。
そのため、契約時にはしっかり内容を確認しておくことが大切です。
しかし、契約書を確認していたとしても、原状回復時には想定していなかったさまざまなトラブルに発展することもあるため、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定めています。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復とは借り主の「故意や過失」「通常の想定を超えた使用方法」による消耗部分などを元通りに復旧すること、と定義しています。
また、その原状回復費用は借り主が負担しなければなりません。
一方で、建物は年数とともに経年劣化していくものなので、経年劣化については賃料に含まれるものであり、修繕費用は貸し主の負担になるでしょう。
そのため、借り主に「故意や過失」がなく、「通常の想定を超えた使用方法」でなければ、賃借人はその修繕費用部分は本来負担しなくてよいはずです。
しかし、原状回復においては、貸し主・借り主双方の認識が違うことがあり、退去時の原状回復費用をめぐってトラブルに発展しやすいでしょう。
また、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」はもともと一般的な賃貸住宅を想定したものであるため、オフィスの原状回復と多少異なる部分がある可能性が高いです。
そのため、「ガイドラインがすべて」というわけではありません。
ガイドラインはあくまでも参考程度にとどめ、現在締結しているオフィスの賃貸借契約書に記載されている原状回復についての取り決めを基に、原状回復費用を負担しなければならないでしょう。
2. 原状回復費用はケースバイケース
オフィスを退去する前に、原状回復費用の相場を確認しておきましょう。
相場を知っておけば、「こんなはずでは」と請求書をみて慌てずにすむはずです。
相場はオフィスの規模やビルの状態によって異なりますが、一般的な相場としては、小・中規模オフィスの場合、一坪あたり2〜5万円程度、大規模なオフィスでは一坪あたり5〜10万円ほどです。
しかし、固定の金額ではないため、あくまでも参考程度として考えておきましょう。
実際にはこれ以上の金額を請求されることもあるので、注意が必要です。
会社によっては、オフィスの内装にこだわって、さまざまな造作を加えていたような場合などは、原状回復費用も相場よりも高めになる傾向があります。
たとえば、オフィスの一部をショールームにしていたり、キッチンスペースなどの水回りを新たに造作していたりすると原状回復費はその分かかってしまうでしょう。
また、工事会社の人手が不足していることにより、原状回復工事自体の金額も上昇傾向にあるともいわれています。
そのため、原状回復費用の相場はケースバイケースであることも覚えておきましょう。
3. 原状回復をめぐるトラブルを避ける3つのポイント
オフィスを退去することが決まったら、原状回復費用はどれくらいかかるのかを早めに確認しておくことが大切です。
事前に余裕をもって確認しておくことで、貸し主や工事業者とのトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
最初にしておくことは、賃貸借契約書の内容を確認し、原状回復についての取り決めで工事業者が指定されているかどうかをチェックします。
一般的には、貸し主が原状回復の工事業者を指定しているケースがほとんどでしょう。
なぜなら、貸し主としては借り主が費用の安い工事業者に依頼して、工事が手抜きされてしまうことを避けたいからです。
そのため、貸し主は安心して工事を任せられる業者を自ら選定して、トラブルを防いでいるのです。
しかし、あくまでも費用を負担するのは借り主であり、もし高額な原状回復費用を請求されてしまうと、予算が足りなくて困ってしまう可能性があるでしょう。
貸し主指定の工事業者が指定されていたとしても、あまりにも高額である場合には、貸し主に相談してみる余地はあります。
また、賃貸借契約書に貸主指定の工事業者の記載がない場合には、借り主が工事業者を自ら探すことが可能です。
つぎに、賃貸借契約書に貸し主指定の工事業者が記載されていて、その業者に依頼する流れになったとしても、確認すべきポイントがあります。
以前の借り主がどれくらいの原状回復費用を負担していたのか、工事業者に問い合わせて当時の見積もりを入手してみましょう。
以前の原状回復工事の内容を確認しておくことで、原状回復工事にどれくらいの費用がかかるのか把握するのに役立ちます。
また、以前の原状回復工事費用と大きく見積もり金額が異なっていた場合には、その理由を工事業者に問い合わせることができるでしょう。
最後に、貸し主から指定された工事業者に原状回復工事を依頼する流れになったとしても、他社に相見積もりを依頼しておきましょう。
なぜなら、あまりにも高額な工事費用で交渉の余地があると判断したときには、他社の見積もりを提示して交渉する必要があるからです。
場合によっては、指定の工事業者の原状回復工事費用を安くすることができる可能性があります。
相見積もりをとっておくことで、費用面のトラブルを回避できる可能性があるでしょう。
4. 原状回復費用が高くなる原因とは
原状回復工事が必要なのは理解しているものの、届いた請求書をみて「想像していたよりも高いかも」と感じることがあります。
なぜ、原状回復費用は高く感じるのでしょう。
その理由のひとつに、工事業者が現地の確認をしっかりしないまま、おおよその見積もりを出してくることがあげられます。
工事業者としては、現地調査をしない分、人件費や手間もかかりません。
また、高めの見積もり金額を出しておくことで、想定外の工事があった場合でも問題なく対処できるようにしている可能性が高いでしょう。
さらに、相場よりも高めの見積もりを出したとしても、借り主が建築のプロでなければ問題ないだろう、と考えている場合もあるので注意が必要です。
そのほかの理由としては、本来経年劣化による消耗として扱われるような費用まで見積もりに含まれていることが考えられます。
借り主が負担しなくてもよい費用が含まれていないか、しっかり確認しましょう。
たとえば、通常使用で壁や床の一部が消耗したときは、その部分だけ原状回復をすればよいはずなのに、全面張替えの費用が見積もりに記載されている可能性があります。
その結果、想定していたよりも高額な原状回復費用の見積もり額になってしまうのです。
さらに、床材を全面交換する際に素材自体もあわせてアップグレードされていると、見積もりは高額になるでしょう。
このように、借り主が負担する必要がない原状回復費用が上乗せされていないか、確認する必要があります。
工事業者が契約上貸し主指定であることで、それ以外の業者に工事を依頼できないことも工事費用が高額になる理由です。
ほかの工事業者に依頼ができないと、相見積もりをとって価格交渉をすることができません。
その結果、指定の工事業者の言い値になり、どうしても工事費用は高めになるでしょう。
5. 退去の際は事前に契約書の内容を把握する
オフィスを退去するときは、原状回復費用について早めに確認しておき、一般的な費用の相場を確認しましょう。
相場を知ることで、本来支払わなくてもよい金額を節約することができる可能性があります。
また、賃貸借契約書を確認して、原状回復の範囲や義務、工事業者の指定の有無についても把握しておくことが大切です。
なぜなら、工事業者が指定されていると、原状回復費用が高めに設定されていることがあるからです。
もし、指定の工事業者で工事を行う必要があり、原状回復費用が相場よりも高めに感じた場合には、専門家に相談して交渉してみることもひとつの方法といえるでしょう。