オフィス・事務所移転に補助金・助成金を活用!
受け取るための手続きや注意点は?
オフィスや事務所を移転する際には、多くの費用がかかります。しかし、自治体の補助金や助成金を上手く活用することで、費用面の負担を減らすことが可能です。
本記事では、移転に補助金や助成金を活用するための手続き方法や、注意点、メリット・デメリットを解説し、オフィス移転に活用可能な助成金を紹介していきます。移転にかかる費用を最小限に抑えるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
オフィス移転で補助金・助成金をもらうには目的を明確に
補助金・助成金を受け取るためには、まずオフィス移転の目的を明確に定める必要があります。
オフィス移転には、内装工事費や旧オフィスの修繕費用など、多くの費用がかかるため、移転目的を明確にしておくことで、活用できる補助金・助成金を探しやすくなります。
特に、補助金には審査があるため、移転することで国や自治体へ何らかのメリットがあるということをしっかりと伝えられるようにしておくことが重要です。
オフィス移転で補助金を活用するメリットとデメリット
オフィス移転で補助金を活用するメリットとデメリットには、以下のようなことが挙げられます。
補助金を活用するメリット | 補助金を活用するデメリット |
---|---|
費用が抑えられる | 提出書類が多い |
労働環境の改善につながる | 突然制度がなくなる可能性がある |
事業の信頼度が上がる | 支給後も定期的に検証報告等を求められる場合がある |
この章では上記のような補助金活用のメリットとデメリットについて、詳しく解説していきます。
オフィス移転で補助金を活用するメリット
メリットの一つ目は、費用削減です。オフィス移転には多大な費用がかかるため、補助金・助成金を活用することで、費用を削減することができます。これによって、浮いた資金を設備投資や人材育成などに充てることができるため、企業の成長につながります。
二つ目は、労働環境の改善が可能になるということです。補助金・助成金の中には、労働環境の整備や福利厚生の見直しなどを行うことで受けられるものがあります。これらの改善を行うことで、従業員のモチベーションや生産性の向上につながり、従業員の定着率のアップも期待できます。
三つ目は、企業価値や信頼性のアップに繋がる点です。補助金・助成金を受け取るには、厳しい審査があるため、それを通過することで国や地方自治体に事業の可能性が認められたということになります。その結果、企業の価値や信頼性がアップし、取引先や顧客からの信頼も高まります。
オフィス移転で補助金を活用するデメリット
デメリットの一つ目は、補助金や助成金の審査を受けるためび手続きは煩雑であるということです。申請時に必要な書類作成や提出が多く、不備があれば作成し直さなければならないなど、手間が多いことが挙げられます。書類作成や提出に時間を要するため、企業内での負荷が増加することがあります。
二つ目は、申請しようとしていた制度が突然なくなる可能性も考えなければならないということです。補助金・助成金は、公募期間や条件が変わる場合があり、申請しようと思っていた制度が突然終了することもあります。企業は常に最新の情報を収集し続けなければなりません。
三つ目のデメリットは、支給後にも報告を求められ、リソースが削られるという点です。
補助金・助成金を受け取った場合でも、給付後に実施や成果の報告を求められることがあります。このため、給付後にも労力が必要な作業が生じ、企業にとって負担となる場合があります。
オフィス移転の際に活用できる補助金の種類
オフィス移転の際に活用できる補助金には以下のようなものがあります。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 創業助成金
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- キャリアアップ助成金
これらはオフィス移転に直接関わる補助金ではないものの、要件に上手く絡めることでオフィス移転のタイミングに合わせて活用できる場合があります。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者等が革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善に向けた設備投資を行う際に支援する制度です。
このため、オフィス移転に伴う新たな設備投資を検討している企業が対象となります。例えば、新しいオフィスに必要なインテリアや家具、設備、通信機器等を導入する場合にも活用できます。
ただし、補助金の交付対象となる事業内容は、事前に申請する必要があり、交付された補助金の使途については厳密な報告が必要となるため、事前の計画が必須となります。
IT導入補助金
IT導入補助金は、業務の効率化や業務の品質向上などにつながるITツールの導入に対して、中小企業や小規模事業者等にかかる費用の一部を補助する制度です。
オフィス移転に際しては、新たなオフィス環境に合わせたITツールの導入が必要になることが多く、その費用の一部を補助金で賄うことができます。
ただし、補助金の対象となるITツールには制限がありますので、申請前に詳細を確認することが必要です。
参考:IT導入補助金2023
創業助成金
創業助成金は、東京都内で創業を予定しているか、創業から5年以内で都内に本拠地を構える事業者を対象としており、人件費、賃借料、広告費など創業初期に必要な経費の一部を助成してもらえます。
オフィス移転に伴う賃貸料の支払いや広告費などは、創業助成金を活用することができるため、オフィス移転の費用に対する負担を軽減することができます。
ただし、募集期間が短く、公社が実施するプログラムの受講など、満たすべき細かな募集要件があるため、全ての要件を満たすまでに2ヶ月程度の期間が必要になることがあります。したがって、活用したい場合は募集期間をよく確認し、数ヶ月前から準備する必要があります。
参考:創業助成金
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、「インボイス導入」、「賃金引上げ」等に対応し、事業継続のために必要な経費を補助する制度であり、オフィス移転にかかる費用も一部補助の対象になる場合があります。
例えば、オフィス移転に伴うテレワーク環境整備や、セキュリティ強化に必要なコスト、また、移転によって得られる業務の効率化に関する経費などが補助対象となります。
ただし、補助金の申請にあたっては、販路開拓や業務の効率化など、補助金を受けるための事業計画が必要であることに留意する必要があります。
参考:小規模事業者持続化補助金
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業が事業承継を契機として新たな事業を検討する場合や、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う場合に支援する制度です。
具体的には、事業承継に伴ってオフィス移転を行い、新たな事業をスタートする場合にも補助金の申請が可能です。
ただし、申請するにはいくつかの条件を満たす必要があります。例えば、申請者が中小企業等であること、引継ぎ事業者が引き続き従業員を雇用すること、引継ぎ事業者の売上高が事業承継後も一定の水準を保持すること等です。
また、中小企業経営者だけでなく個人事業主も申請が可能になっており、引継ぎ事業者の資金繰りを支援するために活用できます。
参考:事業承継・引継ぎ補助金
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、企業が非正規労働者や障がい者を正社員にしたり、キャリアアップや処遇改善などの取り組みを行った場合に支援する制度です。
オフィス移転のタイミングで、正社員に昇格したり、キャリアアップのための研修や資格取得のための費用を補助してもらうことができます。ただし、補助金の対象となる取り組みには一定の条件がありますので、事前に確認する必要があります。
参考:キャリアアップ助成金
オフィス移転の各自治体の補助金
ここからは各自治体のオフィス移転に活用できる補助金を5つ紹介していきます。
- 町田市企業等立地奨励金|東京
- 横浜市次世代重点・成長分野立地促進助成(市内初進出)|神奈川
- 名古屋市本社機能等立地促進補助金|愛知
- 大阪市本社機能立地促進助成金|大阪
- 神戸市企業拠点移転補助制度|兵庫
上記の補助金は、主に県外や市外からのオフィス移転や、新規にオフィスを構える事業者に対して交付されるもので、市や県を跨いだオフィス移転を考えている場合には、移転先にこのような制度があるかどうかを調べてみるとよいでしょう。
町田市企業等立地奨励金|東京
町田市企業等立地奨励金は、町田市内に新規に立地する企業や既存企業が増設などによって規模を拡大する場合に、奨励金を交付する制度です。オフィス移転によって新規に立地する場合や、既存施設の改修や増築による拡大にも適用されることがあります。
ただし、具体的な要件や交付金額などは、町田市の条例や規定に基づき異なるため、詳細は町田市の担当窓口に確認することをおすすめします。
参考:町田市企業等立地奨励金
横浜市次世代重点・成長分野立地促進助成(市内初進出)|神奈川
横浜市次世代重点・成長分野立地促進助成(市内初進出)は横浜市において新規進出する際に活用できる制度です。
オフィス移転によって横浜市内に初進出する企業も、この助成金の申請が可能です。ただし、対象となるのは横浜市が重点的に支援する成長分野の企業に限られます。
名古屋市本社機能等立地促進補助金|愛知
名古屋市本社機能等立地促進補助金は、名古屋市に本社機能等を移転する企業や新たに開設する企業に対して、移転・開設に伴う経費の一部を補助する制度です。
具体的には、土地取得費用、建物の新築や改修費用、移転に伴う機器や設備の移設費用などが対象となります。
ただし、補助金の上限額や支援率、申請条件などは詳細に定められているので、事前に確認が必要です。
大阪市本社機能立地促進助成金|大阪
大阪市本社機能立地促進助成金は、大阪市内に本社機能を移転または新たに設置する事業者を対象に、賃料の一部を助成する制度です。
つまり、オフィス移転に伴って賃貸料がかかる場合、その一部の補助が受けられます。
ただし、助成金の対象となる事業者や条件などは詳細に定められていますので、事前に確認する必要があります。
神戸市企業拠点移転補助制度|兵庫
神戸市企業拠点移転補助制度は、神戸市外からの本社機能の移転を促進し、地方創生に貢献することを目的とした制度です。
この制度では、オフィスとなる建物の取得費用や賃料、また地元の雇用に対する補助金が交付されます。
従って、オフィス移転によって神戸市内に新たに拠点を設置する企業が対象となり、拠点の設置に必要な経費の一部を補助してくれます。
オフィス移転で補助金・助成金を受け取る手順
この章では、補助金・助成金を受け取るまでに必要な以下の手続きについて順を追って説明していきます。
- 活用できそうな補助金・助成金を調べる
- 申請に必要な書類の作成・提出
- 事業スタート後、補助金・助成金の申請・受け取り
- 必要に応じて、実績・効果の報告をする
1. 活用できそうな補助金・助成金を調べる
補助金・助成金の内容や条件は、都道府県や市町村によって異なります。
そのため、オフィス移転をする前に、移転先の地域や新たに導入する設備などに合わせて、どの補助金・助成金を活用できるか調べる必要があります。
自治体のホームページや、国が提供する中小企業向け支援情報サイトなどを活用して情報収集を行い、最適な補助金・助成金を選ぶようにしましょう。
2. 申請に必要な書類の作成・提出
次に、申請に必要な書類の作成・提出が必要になります。
申請に必要な書類には、申請書や計画書、財務諸表、事業計画書などがあり、補助金・助成金ごとに必要な書類や申請期間が異なるため、事前に詳細な情報を収集しておくことが重要です。
また、補助金・助成金を申請する際には、移転時に利用する業者から見積もりを取り、その費用を算出しなければなりません。申請に必要な書類の作成や業者選定には日数がかかるため、早めに準備することが重要です。
3. 事業スタート後、補助金・助成金の申請・受け取り
補助金・助成金の採択が決定したあとは、実際に事業をスタートさせ、支出を行う必要があります。
支出が終わった後に、支払いの証明書(請求書、領収書、納品書等)を準備し、申請書に必要事項を記入して交付の申請をします。申請書には、支出の内容や金額、支払いの証明書の添付等が必要となり、申請書は補助金・助成金を交付する機関に提出します。
なお、提出書類に不備がある場合は支給が遅れたり、支給額が減額されたりするだけでなく、支給自体がされなくなる場合もありますので、申請書類の作成には細心の注意が必要です。
4. 必要に応じて、実績・効果の報告をする
補助金や助成金を受け取った企業は、一定期間後に実績や効果の検証報告を求められる場合があります。
報告を怠ると返還を求められることがあるため、補助金や助成金を受け取った企業は報告期限を遵守しなければなりません。
報告書の内容は、支給機関によって異なりますが、一般的には移転によって達成された目標や効果、支援金を使った具体的な取り組みや支出の内訳などを報告することが求められます。
オフィス移転で補助金・助成金を活用する場合の注意点
オフィス移転で補助金・助成金を活用する場合は、以下4点の注意点に留意する必要があります。
- 補助金・助成金は原則後払い
- 手順が煩雑で、かなりの工数がかかる場合もある
- 返還を求められる場合もある
- 補助金・助成金は課税対象である
上記の注意点を理解したうえで、活用する補助金・助成金を決めるようにしましょう。
補助金・助成金は原則後払い
補助金・助成金は、原則として事業を開始し、支払いを行った証明を提出した後に支給されます。事前に必要な経費を全て自己負担しなければならず、そのため費用負担が重くなる点に注意しましょう。
また、補助金・助成金の支給までには時間がかかる場合があるため、事前にしっかりとした資金調達計画を立て、経費管理に十分注意することが重要です。
手順が煩雑で工数がかかる場合もある
補助金・助成金の申請には、事業計画や予算書、支出証明書、効果検証報告書などの書類を提出する必要があります。
特に採択率の低い補助・助成事業では、より詳細で具体的な計画書の提出が求められるため、申請の手順は煩雑になる傾向があります。
また、支給後も効果検証報告書の提出が求められる場合があり、それらの手続きに必要なリソースやスケジュールが確保できるかどうかも補助金・助成金を選ぶ上で重要です。
返還を求められる場合もある
補助金・助成金を活用した場合、以下のような事例があると支給額の一部または全額を返還を求められることがあります。
- 申請時に提出した計画書と実際の事業が異なる
- 支払い証明書に不備がある
- 事業が早期に撤退する、または実績が上がらない
- 必要な費用に充てられていなかった
補助金・助成金を活用する場合は、計画書に記載した内容で正しく支出をする必要があります。また、成果が上がらない場合でも、事業を継続させる努力を示し、返還を求められないようにするためには、正当な理由を明確に説明できるように対策を取る必要があります。
補助金・助成金は課税対象である
補助金・助成金は課税対象となります。
具体的には、支給された補助金・助成金は「雑所得」に分類され、法人は法人税、個人事業主は所得税の課税の対象となります。
また、費用の支払いのあった年と支給された年が異なる場合は、その時期に応じて課税されることになるため、特に注意が必要です。
オフィス移転で補助金・助成金を受け取るために事前準備が必要
この記事では、オフィス移転に補助金・助成金を活用するポイントやメリット・デメリット、申請手順の解説、国や各自治体の補助金・助成金の紹介を行いました。
オフィス移転は多くの費用がかかるものですが、補助金・助成金を活用することで、費用を抑えることができます。ただし、申請にあたっては事前に準備が必要であり、返還を求められる場合もあることに注意が必要です。
申請要項を正確に把握し、補助金・助成金活用の検討・準備を行うことで、スムーズなオフィス移転を実現できるかもしれません。