ウチのオフィス賃料は相場と比べて高い?
オフィスの賃料相場の考え方
企業にとってオフィス賃料や店舗家賃は、販売管理項目の中で大きな割合を占める経費となるため、可能な限り抑えることが重要です。
そのため、現在のオフィス賃料の値段を見直す交渉や、新しくオフィスを構える際の値段交渉を行って、賃料の相場よりも下げる努力を多くの企業がしています。
しかし、「現在のオフィス賃料と比較するべき家賃相場がわからない」「オフィスを新しくする際に、そのエリアの実際の家賃相場がわからない」などの悩みを抱えている方は少なくありません。
オフィス賃料の相場は、ネットで検索してみるとすぐに分かります。
しかし、ネットで検索した家賃相場が、実際にオフィスを借りる際の家賃と異なることが多いのです。
大事なことはネットで調べたオフィス賃料の相場を分かった上で、その相場の賃料を判断する考え方を知っておくことです。
この記事では、オフィスの賃料に関する考え方を、わかりやすく解説していきます。
業種業態によってさまざま?適正な賃料を判断するには
オフィスにかけるコストが適正であるかどうかを判断する方法は、企業の業種や業態、従業員の規模によってさまざまです。
ただし、どのような業種や業態、従業員の規模であっても、オフィス賃料や店舗の家賃は人件費を除いた販売管理項目の中で最も大きくなる経費の一つだと言えます。
オフィス賃料が適正であるかどうかを判断するための基準となるのが「売上に対する割合」です。
この割合は、適正賃料でオフィスを借りるためには非常に大切です。
一般的に、オフィス賃料は、粗利に対して10〜20%の範囲であれば適正だと言われています。
つまり、1カ月のうち3〜5日分の粗利にオフィスを借りるためのコストとして使用していると、その金額が適正であると考えられるのです。
しかし、企業によってビジネスモデルはさまざまであり、適正なオフィス賃料も業種や業態、従業員数などによって異なります。
そのため、適正賃料を算出することは、重要ではありますが、とても難しいことです。
ただ、同じ業態や業種の企業や、従業員規模が同等の企業の、オフィス賃料の粗利に占める割合を調べて比較することで、適正賃料を把握するための一つの基準とすることができるでしょう。
例えば、従業員が少ないほど、デスク以外のトイレや会議室、設備などにかかる費用が多くなるため、オフィス賃料の粗利に占める割合は大きくなります。
他にも、人通りやアクセスが重要な業種である場合は、駅に近い物件などを選ぶ必要があるため、売上に対するオフィス賃料の割合は大きくなります。
逆に、製造業などの場合は、工場を賃料の高い場所に設ける必要がないため、割合は小さくなります。
ネットの賃料相場を鵜呑みにしてはダメ
オフィスの賃料相場とは、エリア毎のオフィスをレンタルするための賃料の平均的な値です。
オフィスの賃料相場は、あくまで目安となる数値であり、エリアや設備、時期などによって大きく変化することがあります。
この賃料相場は、ネットで検索すればすぐに調べることが可能なので、自社のオフィスの地域や新しくオフィスを設ける地域の賃料の相場を一度確認してみるといいでしょう。
しかし、実際には多くの企業がネットで調べればわかる相場の賃料よりも、安い賃料で入居している場合がほとんどです。
ネットの賃料相場を鵜呑みにせず、その相場の値を参考にして、実際にオフィスを借りる際の契約賃料の相場を調べるよう心がけましょう。
ネット上に公開されている賃料相場よりも安い賃料になる理由は、公表されている賃料のデータの多くが「募集賃料」を参考にしているためです。
つまり、物件を貸し出す側が決める「募集賃料」と、実際にオフィスを借りる際に契約する「契約賃料」には差があります。
そのため、ネットで調べて賃料相場が分かったからといって、その賃料相場を基準にオフィスの賃料を決めてしまうと、実際の他の物件よりも高い賃料を支払ってしまうことになるので注意が必要です。
まずはネットで検索してみることは大切ですが、ネットで公表されている賃料相場だけを基準にせず、納得できる賃料で契約できるようオフィスオーナーと交渉するようにしましょう。
実際の賃料相場を知るためには実際の情報収集がカギ
ネットで調べたオフィスの賃料相場ではなく、実際のオフィス賃料の相場を知るための方法は、「自分の足で情報収集する」という地道なものになるでしょう。
一般住宅だと家賃が公開されていることがほとんどですが、オフィス物件は家賃を非公開にしているケースが多くあります。
企業に対する物件家賃は、同じ建物の中にあっても契約内容や契約する時期、条件によって大きく変わるという理由から、非公開にしているのです。
その中でも、店舗として利用する物件の場合は賃料の変動が激しいため、募集賃料を公開すると既に契約している方からの賃料見直しの要求のリスクがあることも、賃料を非公開にしている理由の一つです。
つまり、オフィスの実際の相場はネットで検索するだけではわかりません。
正確な家賃相場を知るためには、足を動かして情報収集をすることが、最も確実な方法です。
できる限り多くの仲介業者を回ったり、既にオフィスを設ける予定のエリアで契約している方にオフィス賃料を聞いたりして、正確な家賃相場を把握しましょう。
オフィス賃料の正確な相場を知っていることで、入居時の賃料交渉の際にとても重要な交渉材料となります。
この努力を怠ってしまうと、長期的に見ると数百万円の差が出ることもあるので、自分の足を使って調べることが本当に大切です。
また、既存のオフィスがあるエリアの賃料の相場を調べ直すことで、オフィスオーナーへの賃料の見直しの交渉もできる可能性があるため、オフィスを新しく設ける予定のない企業も、実際の賃料を把握するメリットがあります。
実質賃料は共益費や敷金礼金も入れて考える
オフィスを借りるとなると、月々の賃料のみでなく、保証金や礼金、共益費などもかかってきます。
オフィスの賃料が適正かどうかを判断する際には、「実質賃料」という考え方が非常に大切です。
実質賃料とは、毎月の賃料の他に、保証金や礼金、共益費などの、オフィスを借りるためにかかる全てのコストを合計し、1カ月あたりの支払い家賃にするといくらになるかを判断する計算方法です。
坪単価で表記される月々の家賃を比較して、どのオフィスを借りるかを判断してしまうことが多いですが、「実質賃料」という別の見方からオフィスにかかるコストを計算してみましょう。
例えば、月々の賃料が20万円の物件Aと、月々の賃料が22万円の物件Bがあったとします。
これだけを見ると、物件Aの方が安いと考えられますが、この金額に礼金を含めて考えてみると異なる結果となることがあるのです。
物件Aの礼金が3カ月分だとすると、1年間にかかるコストは物件Aが「20万[円/月]×12[月]+20万[円/月]×3[月]=300万円]」となり1カ月ごとの実質賃料は300万[円]÷12[月]=25万[円/月]」となります。
一方で、物件Bの礼金はなしとすると、実質賃料はそのままの月々22万円であるため、物件Bの方が安くなります。
今回は礼金のみで計算しましたが、他にも保証金や共益費がかかるので、それを考慮して実質賃料を算出してみましょう。
また、契約する年数によっても実質賃料は変化します。
例では、物件Aと物件Bを1年間の実質賃料で比較すると物件Bの方が安くなりましたが、この比較を10年間で行うと物件Aの実質賃料の方が安くなります。
現在のオフィスに何年間入居しているのか、新しいオフィスを何年間契約するのかなどの計画を立てておくことも、実質賃料を考える上で大切です。
実質賃料が分かればリアルな相場観で交渉できる
自社のオフィスの適正賃料や、新しくオフィスを設ける地域の適正賃料を知るには、実際にいくつかの不動産業者に足を運んでみて、実質賃料のシミュレーションをすることが大切です。
企業にとっては避けられない、固定費となるオフィス賃料や店舗家賃などは、可能な限り安く抑えたいものでしょう。
実際に足を使って集めた賃料相場や、実質賃料のリアルな相場観があれば、オフィスを借りる際の値段交渉や、現在のオフィスオーナーへの家賃交渉を、自信を持って行うことができます。
まずは、エリアの賃料相場を検索するところから始めて、実際に仲介業者に足を運んでみましょう。